研究課題/領域番号 |
23790289
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 康裕 浜松医科大学, 医学部, 助教 (00324343)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 組織型プラスミノゲン活性化因子 / マトリックスメタロプロテアーゼ |
研究概要 |
ローズベンガルと緑色光による光化学反応で緑色光照射部位選択的に血管内皮を傷害し血栓性閉塞を組織型プラスミノゲン活性化因子(t-PA)遺伝子欠損マウスの左大脳皮質に作製した。障害7日後までの運動機能、運動学習、短期記憶および神経症状の観察を行った。障害7日後での脳梗塞巣の大きさおよび神経症状には、野生型と欠損型で差がなかった。オープンフィールド試験である半径10cm円からの脱出する時間において、野生型では脳障害を与えていないマウスに対して有意に脱出時間の延長を認めたが、欠損型では脳障害の有無に関わらず、脳障害を与えていない野生型と同程度であった。そこで、神経細胞死によって曝露される活性酸素に着目し、脳血管内皮培養細胞を用いてt-PAと活性酸素の相乗効果についてマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9の産生を検討した。t-PAと活性酸素の相乗効果によって転写因子であるNF-kBの核への移行が増加し、MMP-9の産生は増加した。この機構の一部にNF-kBの阻害因子であるI-kBが分解されていることを見出した。これらのことから、脳梗塞によって曝露される活性酸素によってMMP-9産生が増加し、t-PAによって活性化されたプラスミンによってMMP-9が活性化されることが、脳障害後のマウスの潜在的な逃避行動すなわち歩行へのモチベーションに対して関わっており、脱抑制あるいは衝動性に内因性t-PAが関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
t-PA遺伝子欠損マウスを用いた行動薬理学的な評価により、脳虚血後の情動障害に内因性t-PAが関与していることを発見した。また、脳血管内皮培養細胞にてMMP-9の産生亢進および転写因子NF-kBの阻害たんぱくであるI-kBの分解に関わっている可能性があることを見出している。今後、t-PA/PliのシステムがどのようにI-kBを分解するかのメカニズム解明を行っていく予定である。また、MMP-9が脳梗塞後の情動障害にどの様に関わっているか研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
t-PA遺伝子欠損マウスを用いて、脳虚血後の神経伝達物質の変化について検討を行う。それにより、変化する神経伝達物質を絞り、tPA/Pli/LRP/MMPs阻害によって脳虚血後の情動障害が回復するか検討を行う。また、機能タンパクが虚血下における血液脳関門を通過するかどうかを電子顕微鏡など使用して検討を行う。さらに、脳内におけるI-kBの変化を動物レベルで検討を行う。培養細胞を用いてtPA/PliによるI-kBの分解経路の解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費: 73.5万、旅費: 6.5万円。物品費は主に消耗品に使用する。動物実験(行動薬理学評価)を引き続き行い、購入費および飼育維持費として使用する。培養細胞の実験においては、培地など消耗品に使用する。抗体は染色、ウエスタンブロッティングおよび動物投与に用いて使用し、その他、試薬は組織学・生化学的検討に要する。旅費は、成果発表に使用し、国内学会で発表する予定である。
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