抗生物質の探索は、多剤耐性菌や新たな病原菌への備えとして重要であり、特に既存の分子骨格とは異なる新規化合物の発見・創成は大きな意義がある。本研究では、放線菌Rhodococcus erythropolis JCM6824株が合成する新規抗菌物質であるオーラシンREの強い抗菌活性発現に重要な役割を果たすシトクロムP450(RauA)の構造機能解析を行った。その結果、RauAはオーラシン類のキノリン環窒素を水酸化する活性を持ち、この水酸基の付加によって強い抗菌活性が生まれることが明らかとなった。また、RauA遺伝子をノックアウトした菌株から抽出された不活性オーラシンRE前駆体を用い、その不活性物質とRauAとの複合体結晶構造の解析を行った。解析の結果、RauAのヘムポケット内にオーラシンが結合している状態が明確に観察され、キノリン環窒素の水酸化を可能とするRauAの基質認識メカニズムを明らかにした。
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