最終年度は全国の医療機関のスタッフ(医師,看護師,リスクマネージャー,病院管理者)に対する追加アンケート調査と分析を行ったが,特に医療スタッフの職業性ストレスの特徴について重点的に分析を行った。医師は,看護師と比較して仕事の裁量度が高く,自らの技能の活用度も高い傾向にあり,働き甲斐を感じている者が多く,仕事の満足度も高かった。しかし,同僚支援を得にくく,上司のリーダーシップが弱い傾向にあり,看護師と比較して十分な支援を得にくい環境にあることが示唆された。また,褒めたり失敗を容認する環境になく,キャリア形成に不満を有している者が多かった。看護師は他職種と比較して状態の悪いストレス要因も多く,心理的ストレス反応の状態も悪かった。しかし,医師と比較して同僚支援,上司のリーダーシップが得やすく,褒めたり失敗を容認できる職場環境にあることが示唆された。リスクマネージャーは看護師とストレスの特徴が似ているが,医師や看護師と比較して身体負担が軽かった。また仕事の裁量度や経営層との信頼関係が看護師と比較して良かった。病院管理者は基本的に医師であるが,一般の医師と比較して技能活用の状態が悪かった。医師として十分な技能を積んできたという自負がある一方で,経営という不慣れな職務を強いられている状況が示唆される。これらの研究成果については,日本ストレス学会で発表を行った。また現在は,英文論文の投稿準備中である。 また,診療関連死が発生した際,過失の軽重や確実性に関わらず,遺族が死因に納得していない場合には医療事故調を利用したいという回答が多く,遺族が死因に納得している場合には病院管理者の判断に任せてしまいたいという回答が多い傾向にあった。しかし,職種ごとの回答傾向には有意な差がみられた。さらなる分析結果とともに研究成果を英文論文として公表する予定である。
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