肥満に基づくレプチン抵抗性は、高レプチン血症を惹起する。高レプチン血症は非アルコール性脂肪肝炎(NASH) の病因の一つと考えられている。しかし、アディポサイトカインであるレプチンがどのような機序で慢性炎症であるNASHを引き起こすかについては十分に理解されていない。 我々は、 制御性T細胞、ナイーブCD4+T細胞がレプチンレセプターを発現しており、高レプチン環境では制御性T細胞の免疫抑制機能が低下することを見出した。我々はレプチンの獲得免疫系の作用とNASH発症との関連を検討するため、リンパ球系のみレプチン受容体を発現させるマウスを作製した。このリンパ球系のみレプチン受容体を発現させるマウスでは、高脂肪食負荷により重度のNASHが発症することが観察された。肝臓浸潤免疫細胞をフローサイトメーターで解析したところ、制御性T細胞が減少し、クッパー細胞すなわち肝在住マクロファージが活性化していた。 次に、この制御性T細胞の抑制機能低下がNASHの直接的な発症原因となるかについて実験的に検討した。高脂肪食負荷下に一過性に制御性T細胞を除去したところ、NASHが発症することを病理組織学的に確認した。しかも、興味深いことに制御性T細胞の除去では肝臓炎症反応のみならず、肝脂肪化自体も悪化していた。 つまり、高レプチン環境により制御性T細胞の免疫抑制機能が傷害されるとヘルパーT細胞の活性化とそれに続く肝在住マクロファージの活性化が起こりNASH発症の一因となることが明らかとなった。
|