家族性胃底腺ポリポーシス患者の胃底腺ポリープにおけるRUNX3の発現を調べるために免疫染色を行った。これまでの研究では主に凍結標本を用いて免疫染色を行われていたが、本研究ではホルマリン固定後の組織を用いて染色を行ったため、条件設定が困難であった。繰り返し、条件を変更し染色を行ったが、RUNX3の発現を評価することはできなかった。 同時に、常染色体優性遺伝疾患と思われる家族性胃底腺ポリポーシスの原因遺伝子の同定のため、同一家系の発症者6名と非発症者3名のDNA検体を用いて、SNPアレイでタイピングし、リンケージ解析を行った。リンケージ解析では、LODスコア1.8程度のピークが7ヶ所みられた。 続いて発症者1名のDNA検体を用いて、次世代シーケンサーで全エクソン領域の配列を同定するエクソーム解析を行った。発症者はデータベースにSNPとして登録されていない稀な遺伝子変異をヘテロでもっていることが想定されるため、そのような遺伝子変異を検索したところ318ヶ所同定された。この遺伝子変異のうち、リンケージ解析で同定された候補領域に含まれるものが4ヶ所存在したが、家系解析を行ったところいずれも原因変異としては否定的であり、原因遺伝子の同定には至らなかった。 常染色体優性遺伝疾患の原因遺伝子同定は、劣性遺伝疾患の原因遺伝子同定より困難とされている。今後は、さらに症例数を蓄積し、大規模なリンケージ解析を行って候補領域を狭めていき、その領域で全ゲノムシーケンスを含めた詳細な解析を行う予定である。
|