本研究で我々は NASH の発症過程において、リピドラフトの役割を明らかにするために、飽和脂肪酸負荷によるリピドラフトの形態変化と酸化ストレス応答性の変化について検討した。 PA で前処置した肝細胞内に有意に脂肪滴の増加を認めた(p<0.01)。また、PA 負荷によりリピドラフトのクラスター化率は対照群 23.5±4.7%に対し PA 群では 36.8±2.5%と有意に増加した(p<0.05)。PA で前処置した肝細胞は極低濃度(25μM)の t-BuOOH 負荷で細胞死(75.5±8.6% ; p<0.01)が惹起され、酸化ストレス応答性の亢進が示唆された。一方、PA 負荷された肝細胞で t-BuOOH 投与前に CHOX で処置すると、この細胞死は有意に抑制された(56.9±7.5 %; p<0.05)。一方、高濃度(100μM)の t-BuOOH 負荷による細胞死は CHOX で抑制されず、CHOX の細胞死抑制効果は t-BuOOH の毒性を抑制したものではないことが示された。遊離脂肪酸負荷による細胞膜上のリピドラフトの形態変化が、肝細胞の酸化ストレス応答性の亢進および細胞死に関与している基礎的データを明らかにした。
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