研究課題/領域番号 |
23791118
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
吉見 竜介 横浜市立大学, 医学部, 助教 (70585265)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 免疫学 / 内科学 / 膠原病学 |
研究概要 |
<線維芽細胞の炎症性サイトカイン産生能におけるTRIM21の役割> マウスEGFP-TRIM21融合蛋白をNIH3T3細胞株に高発現させ,NF-κB関連蛋白の量的変化をウェスタンブロット法にて調べた結果,EGFP-TRIM21の発現量依存的に内在性TRAF6の発現量が低下した.免疫沈降法によりV5-p62の発現量依存的にEGFP-TRIM21とTRAF6の共沈を認め,p62が両者の相互作用に必要であることが明らかになった.<樹状細胞や線維芽細胞のI型インターフェロン(IFN)産生能におけるTRIM21の役割> 高発現系免疫沈降法によりTRIM21とIRF5の相互作用を調べているが,両者の共沈は今のところ認められない.<SLE・SSの病態でのTRIM21の役割> SLE・SS患者,および健常者からPBMCを採取してqPCR法を行った結果,SLE群およびSS群では健常者群と比較してTRIM21 の発現が有意に高かった.SLE群でIRF7,SS群でIRF3,IRF5,IRF7の発現量が健常者群と比べて有意に高かった.I型IFN誘導遺伝子であるMxAの発現量もSLE群およびSS群では健常者群と比較して有意に高かった.一方,I型IFNの発現量はむしろSLE群およびSS群で有意に低かった.<TRIM68の機能解析> TRIM68 cDNAを用いてEGFP-TRIM68融合蛋白発現ベクターを作成し,Flag-IRF融合蛋白発現ベクターとともにHEK293細胞株に高発現して免疫沈降法を行った結果,IRF3およびIRF8とTRIM68の相互作用が示唆された.EGFP-TRIM68を高発現したNIH3T3細胞ではコントロールと比較してpolyI:C刺激によるIFN-βの誘導が抑制された.以上から,TRIM68がTRIM21と同様にIFN-βの産生を抑制する作用があることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の点に示すようにポジティブな結果とネガティブな結果が存在はするが,おおむね研究課題は順調に進展している.<線維芽細胞の炎症性サイトカイン産生能におけるTRIM21の役割> 今回NF-κB関連蛋白であるTRAF6がTRIM21の基質の候補として同定されており,TRIM21がNF-κBシグナリングを抑制的に制御するメカニズムを探る手がかりとなることが推測される.<樹状細胞や線維芽細胞のI型インターフェロン(IFN)産生能におけるTRIM21の役割> 高発現系免疫沈降法によりTRIM21とIRF5の相互作用を調べているが,両者の共沈は今のところ認められない.今後実験条件等を検討する必要がある.一方,SLE・SS患者のPBMCにおいてSLE群およびSS群では健常者群と比較してTRIM21や各種IRF,I型IFN誘導遺伝子の誘導が亢進しており,TRIM21がI型IFN産生の制御を介して病態に関わっていることが示唆される結果が得られている.<TRIM68の機能解析> TRIM21と非常に構造の類似した蛋白であるTRIM68がTRIM21と同様にIFN-βの産生を抑制する作用があることが明らかになり,複数のTRIMファミリー蛋白が協調して生体反応に関与していることが分かりつつある.
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今後の研究の推進方策 |
<線維芽細胞の炎症性サイトカイン産生能におけるTRIM21の役割> TRAF6がTRIM21によりユビキチン化されるかどうか,ユビキチン化試験により検討する.<樹状細胞や線維芽細胞のI型インターフェロン(IFN)産生能におけるTRIM21の役割> TRIM21とIRF5の相互作用について引き続き条件を変えて検討する.<SLE・SSの病態でのTRIM21の役割> SLE群・SS群での蛋白レベルでのIRFファミリーの発現量を調べる.引き続きTrim21-/-マウスの遺伝子背景のB6からMRL/lprへの置換を進める.<TRIM68の機能解析> 内在性の免疫沈降法や蛋白生成による直接結合の確認を行う.マクロファージ細胞株で同様の実験を行い,IL-12p40の産生に対してTRIM68が与える影響を調べる.<アポトーシス細胞のクリアランス能におけるTRIM21の役割> NIH3T3細胞にEGFP-TRIM21融合蛋白を高発現し,UVB照射によって引き起こされるアポトーシスによる細胞形態の変化とEGFP-TRIM21融合蛋白の局在を蛍光顕微鏡で観察する.同細胞をマウスIgGとともにインキュベートし,蛍光色素結合二次抗体を用いてフローサイトメトリーにより細胞表面に結合するIgGの量を定量し,EGFP-TRIM21の発現量との相関を調べる.TRIM21の発現量とマクロファージの貪食能の関連を調べるために,TRIM21を高発現したRAW264.7細胞をIgG結合蛍光ビーズとともにインキュベートし,細胞に取り込まれたビーズの蛍光を定量する.野生型とTrim21-/-マウスから得た骨髄由来マクロファージを用いて同様の実験を行い,貪食能を両遺伝子型間で比較する.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験機器,実験施設などのハード的な面は整っており,本年度の経費のほとんどは培養試薬,遺伝子工学試薬,抗体および消耗品を計上する予定である.実験の一部は長期培養した細胞株を用いることもあり,また実験系にも短期的培養を行うので,培養試薬は必須である.また,各種発現プラスミド,ルシフェラーゼアッセイに用いるプラスミドの構築,定量RT-PCRなど遺伝子工学試薬はもっとも繁用するので,一番多く計上している.抗体はウェスタンブロット法,免疫細胞・組織染色,フローサイトメトリー等で必要となる.これらの実験に用いる消耗品のプラスチック用品は大量に必要である.
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