研究概要 |
小児交互性片麻痺(AHC)は生後2か月頃に異常眼球運動で発症し、6か月以内に麻痺発作、けいれんは6歳頃出現し、認知機能も低下する進行性の神経疾患である。発症頻度は100万人出生に1人とされており、ほとんどが孤発性である。遺伝子の関与が示唆されていたが不明だった。チャネル病と作業仮説をたて、8名の患者にNaチャネルのSCN1A、CaチャネルのCACNA1A、CACNA1B、ATPポンプのATP1A2遺伝子の変異をサンガー法で探索したが有意な変異は同定できなかった。 そこで次世代シークエンサーで全エクソーム解析をAHC典型症例8名に対して行った。De novo仮説を建て、責任遺伝子の選別を行った。一塩基置換での合計712,558個の全バリアント、13,517個の遺伝子より発端者4人以上に共通したCNTN4, SYEN1, ATP1A3の3個の遺伝子まで絞り込みを行った。これら変異に対してin sillico解析を行い、何れの変異もタンパク構造に大きく変化を与える変異であった。サンガー法での発端者に対する変異確認と両親と健常者96名に対して同変異を探索した。CNTN4は次世代シークエンサーのエラー、SYEN1の変異は健常者にみられるものがありpolymorphismと判断した。一方、ATP1A3は発端者8人全員にヘテロ接合でのミスセンス変異を認め、同変異は両親に存在しなかった。また、追加症例として孤発患者2名をサンガーシークエンスで解析しde novoでのミスセンス変異をヘテロ接合で同定した。以上より、AHCの責任遺伝子としてATP1A3遺伝子を発見し報告した。責任遺伝子同定により機能解析が可能となり分子病態解明の戦略が構築できた。これ迄日本人患者32名を検索し約80%に変異を見出し正確な診断が可能となった。また、培養細胞で酵素活性、電気活性を測定し変異の機能解析を進めている。
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