研究課題
日本人の自閉症発症におけるコピー数多型(CNV)の関与を調べるために、以下の実験を行った。180万種のDNAマーカーを搭載したヒトSNP Nsp/Sty 6.0アレイを用いた。現在までに145人の患者および85人の無関係正常対照の検体に上記アレイを用いた。患者のうち108人については両親の検体も用いた。得られた初期データーを品質管理(QC)プログラムにかけ、QC値 >0.4をその後の解析の採用基準とした。低QC値の検体は、基準に合致するまで実験を繰り返し、全検体について基準合致を達成した。CNVの解析にはアレイ企業供給のソフトウェアではなく、PennCNV(ペンシルバニア大学製)を用いた。CNVとしての認定には「LogR標準偏差値(LRR_SD)<0.35」と「連座プローブ数>20」の2条件を用いた。検出されたCNV数は37.21箇所/患者であった。そのうち88%は親と共通のCNV(iCNV)であった。平均4.05箇所/患者は新規生成CNV(dCNV)であった。dCNVの56.3%は、その領域内にエキソンを含んでいた。また、dCNV/iCNVのうち欠失型は、箇所数で74.5%/52.4%、ゲノム長で69%/33.6%であった。これらより、新規生成の欠失型CNVが発症に重要であることが示唆された。発症に重要なdCNVを決定するために、各CNVを、その領域内の全プローブの平均LogR値(mLRR)を用いて評価した。その結果、計140箇所のdCNVが高信頼度を示した。そのうち、124のdCNV領域がエキソンを含んでおり、dCNVにより遺伝子機能に影響があるものと予測される。それら124のdCNV領域の遺伝子のうち少なくとも5個は、その既知(または仮想される)機能から神経系の発生・発達に関連があることが想定でき、当該患者では欠失していたため、自閉症関連遺伝子の候補と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
以下の3点の理由により、研究はほぼ順調と自己評価した。(1)研究開始前に検体収集の完了していた250組の自閉症家系のうち、既に半数近い108組を解析完了したこと。(2)マイクロアレイおよびスキャナーの製造企業(アフィメトリクス社)から供給されているCNV解析ソフトウェアは比較的信頼性が低く、このフィールドで使われているペンシルバニア大学のソフトウェアPennCNVを検討して良い結果を得られるようになったこと(3)現在までの解析検体を用いた結果でも、発症関連遺伝子候補を決定できたこと
予定どおり、研究を継続する。すなわち、残りの自閉症検体について解析を継続する。また、既に得られた発症関連遺伝子候補および今後追加される候補について、定量PCR(qPCR)法を用いて患者での遺伝子コピー数をより性格に決定する。それらの遺伝子について正常対照検体の数を増やして解析する。それらの発症関連遺伝子候補について、さらに多くの側面から発症関連候補としての解析を深める。
マイクロアレイ関連物品、qPCR用のプライマー、PCRキット等を購入して実験を継続する。さらに、この分野の関連情報の収集のために学会に参加するため、その旅費にもこの研究費を執行する。自身の研究発表を行うことも積極的に考慮する。
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