研究概要 |
膵癌は5年生存率が9.8%と低く手術、化学療法、放射線療法など治療の改善が行われてきたが十分な効果は得られていない。一方, EGFRなど癌細胞に特徴的な遺伝子発現が明らかになり, それらの阻害剤など分子標的薬が開発され, 膵癌においても臨床試験が行われている。本研究では、HER2発現膵癌に対して分子標的治療薬抗EGFR抗体の影響を検討し、更に放射線照射を施し、化学療法と放射線療法の併用が膵癌に対して有効な治療改善になることを目的とする。膵癌においてEGFRの異常発現は報告によって差があるが、EGFRをターゲットとした阻害剤の臨床試験はすでに進められている。またVEGFは胆管癌での陽性率が報告されていることから、予後不良因子としての可能性があることから、膵癌に対して抗VEGF抗体と放射線併用治療との有効性も示唆されている。初年度は、数種類の膵癌細胞株に対して、HER2/newプローブを用いたimmunofluorescence法を行い、HER2発現を検討した。HER2発現細胞に対して更にVEGFの発現量をrealtime PCR法により定量し、膵癌細胞株でのHER2, VEGFの発現の相関性を解析した。次に、単独で抗EGFR抗体、抗VEGF抗体、5-FU, cisplatinの膵癌細胞株に対する細胞増殖抑制効果をMTT法により比較検討を行った。結果、すでに有効性が示されている5-FU, cisplatinと同様に抗EGFR抗体・抗VEGF抗体単独で細胞増殖を抑制する傾向がみられた。放射線照射単独での膵癌細胞増殖への影響を検討するために、コロニー法を用いて種々の膵癌細胞株の放射線照射に対する生存曲線を求めた。更に、抗EGFR抗体、抗VEGF抗体各々を添加し、放射線照射との併用による生存率の影響を検討した結果、各々の抗体と放射線照射との併用で細胞増殖抑制への相乗効果がみられた。
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