研究課題
本研究は重症不全心における心筋の線維化に焦点をあて、不全心の機能改善に関わるメカニズムを解明するものである。まず、重症心不全に対して心臓移植目的に左室補助人工心臓を装着した患者の装着前および心臓移植時の心筋を採取し、人工心臓装着前後の心筋の組織学的変化と、心機能など生理学的検査所見と相関を検討した。人工心臓装着後、程度の差はあるもののほぼ全ての患者において左室駆出率の向上を認め、これと相関するように線維化の軽減がみられた。また、同時に興味深い知見として、人工心臓補助中に心筋内微小血管のリモデリングが生じており、これが線維化の軽減と心機能の向上に関与することが証明できた。同内容を、平成24年度米国心臓学会総会において一般口演発表した。さらに、GFP発現ラットより採取培養した骨格筋芽細胞を細胞シート化し、同種同系ラットの虚血性心筋症モデルの梗塞心表面に移植した。心筋の組織学的変化を経時的に観察したところ、細胞シート移植後に線維化が軽減し、同時に筋線維芽細胞数が減少することが、免疫組織染色および電子顕微鏡にて観察できた。このメカニズムを解明するために、コラーゲンの合成および分解経路をWestern blotting、real-time PCR、免疫組織染色にて検討した。コラーゲン合成に関わるHGF、MMP1/2は細胞シート移植後に増加していたが、RECKの発現は減少していた。一方、コラーゲンの分解に関わるリン酸化Smad2やTGF-βR1は細胞シート移植後に減少していたが、Smad7は増加していた。以上より、細胞シートの移植により、線維芽細胞の形質転換を促しコラーゲンの合成と分解の双方の経路がダイナミックに動くことで、心筋線維に変化が生じることが証明された。同内容を平成24年度日本循環器学会および平成24年度日本再生医療学会にて一般演題として発表した。
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