喉頭乳頭腫、喉頭癌および喉頭良性疾患において、HPV陽性腫瘍に対する喉頭局所免疫である抗体の証明を行った。喉頭分泌液および静脈血中の各免疫グロブリン(IgM、IgG、IgA、分泌型IgA)濃度、総タンパク質濃度、Cytokeratin19fragment濃度を測定した。さらに、腫瘍と特異的HPV抗体の局在解明を試みた。結果、疾患の内訳は喉頭癌12例、喉頭乳頭腫4例、他の喉頭疾患15例であった。HPV陽性例は31例中6例あった。内訳はHighRisk型(すべて16型DNA)が3例ですべて喉頭癌(T1a:1例、T2:2例)であり、LowRisk型が3例ですべて喉頭乳頭腫であった。本検討での喉頭癌からのHPV陽性率は12例中3例の25%であった。HPV陽性6例はHPV陰性25例に対して各分泌液組成の濃度が高い傾向があり、特にS-IgAにおいて有意差を認めた。喉頭癌例は非喉頭癌例に対して、分泌液組成の濃度が高い傾向にあった。HPV陽性例の分泌液中のS-IgA濃度上昇していたという結果は、喉頭局所でのHPV感染に対する抗原抗体反応と考えられた。また、HPV陽性喉頭癌3例はHPV陰性喉頭癌9例に対して、各分泌液組成の濃度が高い傾向にあった。HPV陽性癌腫の発現により粘膜免疫が活性化し、異物排除や治癒機転として強く発現していることが示唆される。少なくともHPVの喉頭上皮内への進入や喉頭感染後の播種に対して、S-IgAは活性化し抑制的に働いていると考えられる。
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