プレート形状に裁断したTi-6Al-4Vチタン合金を用いて、その表面にゾルゲル法を用いてバンコマイシンを含む溶液で被膜を施した。まずゾルの主成分であるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)と水の比率について検討したところTEOSがある一定の濃度より高濃度場合はゾルが濁る現象が認められた。そして透明な状態に調整されたゾルでバンコマイシンの濃度の調整を行い、チタン合金上に被膜を作製した。チタン合金表面の被膜の性状を検討したところバンコマイシン濃度依存的に変化が現れた。サーマルサイクルを経て被膜からの薬物徐放性を検討した。バンコマイシン10%重量濃度を超える溶液では、約3週間に値する薬物徐放性が確認できた。またコーティングを行う際のゾルの粘調度を検討した。高粘度になればコーティングの厚みが増すのだが、電子顕微鏡での形態学的分析では250nmを超えるものでは微小なクラックが確認された。このことから200nmでは安定した被膜の性状が獲得できることが明らかになった。そしてバンコマイシン10%重量濃度のゾルで被膜を施したチタン合金を用いて抗菌作用について検討した。コーティングを施した直後のチタン合金を検討するため健常成人の口腔内から採取したプラークより細菌懸濁液を作製し、寒天培地に播種した。円状のチタンプレートに合わせ阻止円の形成が確認できた。37℃で保存された唾液に浸漬して時間の経過により阻止円の形成を検討したところ、14日後当たりから阻止円の形成が縮小された。 以上の結果をまとめると本研究で行ったチタン合金の表面処理では、約3週間の薬物徐放性があり、14日目ごろから徐放性の低下が認められた。これはアバットメントに採用する場合、創傷治癒期では適応できるものと考えられる。今後生体内での機能を検討が望まれる。
|