研究課題/領域番号 |
23792231
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石川 輝明 徳島大学, 大学病院, 医員 (00432758)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 食育 / 顎機能 / 摂食 / 咀嚼 / 嚥下 |
研究概要 |
顎口腔機能に自覚的・他覚的に異常を認めず,第三大臼歯以外に欠損のない成人5名(21~44歳,平均年齢28.4歳)を被験者とし,顎運動と筋電の同時測定を実施した.顎運動測定には6自由度顎運動測定器CS-IIiを使用し,筋活動は咬筋,側頭筋,顎二腹筋より双極誘導し,小型4チャンネル筋電図アンプ(ニホンサンテク社製BA1104m (EMG):新規購入)に入力した.GPS同期型刻時装置のパルス時刻コード(IRIG-B)にて両データの時間的対応を図った.(徳島大学病院臨床研究倫理審査委員会承認番号:1312) 被験運動は,各種限界運動,ストッピング噛みしめ,咀嚼運動,飲水とし,咀嚼中の顎運動,筋活動の推移や運動の滑らかさなど12項目についてデータを解析した.中でも主機能部位での咬合力発現時の顆頭運動からその運動論的特徴を検討することに注目した.左右運動論的顆頭点を解析対象点とし作業側咬筋活動開始時の作業側および平衡側の咬頭嵌合位の顆頭点からの各軸方向への偏位量を求めた(基準座標系:咬合平面座標系). 作業側咬筋活動開始時の作業側顆頭の偏位量は中央値(最小~最大)で前後方向:0.19mm(-0.34~0.90mm),左右方向:0.11mm(-0.62~1.17mm),上下方向:-0.30mm(-1.19~-0.00mm)で,平衡側顆頭では前後方向:2.28mm(0.58~4.01mm),左右方向:0.01mm(-0.66~1.19mm),上下方向:-1.63mm(-2.49~-0.39mm)であり,作業側顆頭は平衡側顆頭に比較して筋活動開始時に咬頭嵌合位の顆頭位に有意に近い位置に戻っていた(Wilcoxon符号付順位検定p<0.05).このことは咀嚼運動時の下顎頭の動態と同様の傾向にあり,主機能部位記録時の顆頭運動の解析が「噛みやすさ噛みにくさ」の客観評価法に繋がる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究費の分割交付に伴い,新規購入した小型4チャンネル筋電図アンプで研究費の1回目の交付分のほとんどを使用したため,実際の測定に必要な材料費や被験者謝金の捻出が困難となって測定作業開始前の準備にとどまっていた.2回目の交付を待ったが当初の想定より遅い10月になってようやく交付を受け,そこから測定を開始することになったため,予定の被験者数には届かなかった.よって今年度の達成度を「やや遅れている」とした.しかし測定を開始してからは順調に被験者数を伸ばしているので,次年度では当初の計画どおりに十分挽回できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度と同様の顎運動と筋電の同時測定を健常被験者についてさらに15名実施し,データの蓄積を勧める.本年度注目した主機能部位記録時の顆頭運動以外の評価項目についても詳細に検討を行っていき,「噛みやすさ噛みにくさ」を客観的に表すパラメータの抽出や評価法の考案をこころみる.一方で,「噛みにくさ」を訴える被験者についても10名測定し,健常者で求めたパラメータや評価法の妥当性や,有用性について検討を行っていく. 得られた成果については,順次国内の関連学会で発表を行っていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度では,当初予定していた被験者数10名より少ない5名にとどまったことから,被験者謝金や研究協力者への謝金,材料費等の支出が計画より少なかった.その分を含めて次年度の研究遂行に利用していく予定である. すなわち,25名分の被験者謝金と研究実施支援者への謝金,測定に必要な材料類や被験食品,資料等の印刷費として使用する.また得られたデータを格納する電子媒体(HDD等)の購入にも使用する.一方で研究を推進していく上で有用な情報・資料収集および成果発表のための出張旅費としても使用する予定である.
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