本課題は、クリストファー・ドレッサーと、明治期における関西の諸芸術・芸術関係者たちとの影響関係を探求するものである。ドレッサーと日本に関する先行研究においては、東京/中央の政府高官やデザイン関係者との接点を焦点化する試みがなされてきた。本研究では、ドレッサーと関西とのつながりを示す、京都の画家、久保田米僊の調査を行った。久保田は、日本画家のみならず著述家としても活躍し、工芸振興に積極的に関わった人物であった。彼は自著『美感新論』のなかで、ドレッサー『装飾デザインの原理』の一部を紹介している。久保田の色彩論を含む「デザイン」観は、ドレッサーとの共通性をみせるが、両者のデザイン思想には、英国と日本の諸芸術をめぐる環境から生じる、興味深い違いもあった。このような比較研究を行うことにより、両者の影響関係および類似点・相違点について考察した
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