研究課題
ロシアのアジア政策の専門家の間では、ロシアと中国の戦略的協調関係は武器貿易総額が過去最高を記録した2005年頃にピークを迎え、2006年以降はロシア側が経済・外交における中国への依存を解消することを重視し始めたという見方が有力である。しかし、先行研究では国境地域における中国経済への依存や人口の非対称性に注目が集まる一方、中国以外の太平洋沿岸諸国に対するロシアの政策の変化や、多国間外交についてはあまり研究されてこなかった。本研究は、ロシア外交における中国との協調と対立のメカニズムに目を向けるだけでなく、アジア太平洋地域において自立した大国となることを目指すロシアが、プレゼンスを拡大する足がかりとして北東アジアでは日本、東南アジアではベトナムを重視していることに注目し、地域戦略全体のなかに日露関係、露越関係を位置づけて新たな協力の可能性を提示した。本研究では海外の研究者との情報交換を重視しており、平成23年度に行ったモスクワ国際関係大学ASEANセンターでの聞き取り調査に続き、平成24年度はロンドンの研究機関やオックスフォード大学でロシア外交の専門家と意見交換や研究会を行った。とくに、British International Studies Associationのワーキング・グループの一つである「ロシアおよびユーラシアの安全保障」研究会では、ロシアのアジア外交における国益や関係性の「多角化」に注目が集まっていたが、その実態については議論が進んでいなかった。この点を考慮して、本研究ではロシアと中国の北極海進出に伴うロシア海軍の近代化と千島列島の戦略的重要性の増大に注目し、ロシアの戦略的関心が大陸(中国)から海域(北太平洋での海域安全保障)に広がっていることを『ロシア・東欧研究』への投稿論文で指摘した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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『ロシア・東欧研究』
巻: 第41号 ページ: 28-44
Global Asia
巻: vol. 7, no. 2 ページ: 130-131