研究概要 |
本研究は,学校選択制をテーマとし,教員の視点から同制度の成果と今後の課題を明らかにするものである。1年目の研究では,関連文献(欧米の研究を中心に)のレビューを通じて,理論的枠組の構築と実証分析で必要となる計量分析の方法論についての検討を行った。理論的検討においては,学校改革の成果をめぐる欧米の研究(学校社会学や心理学の分野)の蓄積に基づき,教師の自効力感(Teacher's self-efficacy),社会関係資本(Social Capital),そして同僚性・協働性(Staff collegiality/collaboration)などが論点として設定されていることを整理し,それらの指標の設定方法などについても検討した。その一方で学校改革の弊害(今後の課題)の論考としては,ストレス(行動的ストレス反応)の指標を用いて検証が行われていることを整理し,それらの指標の作成方法などについて検討した。実証分析で必要となる計量分析の方法論の検討においては,学校-教師といった入れ子状態になったデータ構造を考慮した推定モデルが常用されていることを整理した。具体的には,マルチレベルモデルを採用することによって対処可能であることを整理し,また,因果効果の推定に際して,傾向スコアなどを用いて,共変量を調整した因果モデルなどなども分析において用いられていることを明らかにした。さらに実証で必要となるデータセットの構築についても検討を行い,調査対象の選定を行った。以上の作業を通じて,次年度以降に実施する実証のための理論的枠組の設定,実証方法や素材の準備を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,当初の計画通り,文献研究を通じて,次年度の実証で必要となる(1)理論的枠組みを構築する作業,(2)計量分析手法のレビューを十分に行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)学校選択制の実施後,10年程度の時間が経ているが,どのくらいの教師が賛成しているのか,教師の学校選択制に対する態様の検証を把握する。 (2)教師の自己効力感(Teacher's selfefficacy),社会関係資本(Social Capital),同僚性・協働性(Staff collegiality/collaboration)を用いて,教師に対しての成果を検証する。 (3)学校選択制の導入に伴う,多忙の実態について,検討する。学校選択制の導入に伴う多忙化が指摘されていることを踏まえて,学校選択制の導入によってどの程度多忙になっているのか,また,その多忙の内実がどのようなものであるのかを明らかにする。
|