本年度は,昨年度の先行研究のレビューおよび実証の準備を踏まて,構築したデータセットに基いた定量的アプローチによって,学校選択制下の教員の意識の実態を明らかにするとともに,学校選択制を継続する上での今後の課題を明らかにした。具体的な内容および意義は以下のとおりである。 <具体的内容> (1) 学校選択制の導入後10年程度の時間が経過している状況において,どのくらいの教師が賛成/反対しているのかといった教師の学校選択制に対する態様の検証を行った。(2) 学校選択制下における教師の自効力感(Teacher's self-efficacy),信頼(Trust),同僚性・協働性(Staff collegiality/collaboration)の検証を行った。(3) 学校選択制の導入に伴って教師の多忙が指摘されていることを踏まえて,多忙の実態と多忙感についての検証を行った。なお,これらの検証結果は,国内および国際学会における口頭報告として,発表した。 <意義,重要性> (1)これまでの研究は,児童生徒の視点からアプローチされた研究が中心的であったが,本研究では教師の視点からのアプローチをしたことによって,学校を「選ぶ側」ではなく,「選ばれる側」からの視点による研究蓄積に貢献した。(2)先行研究で議論されてきた個々の教員の意見が,教員全体としてみた場合にどのように位置づけられるのかを示した(客観化,相対化)。
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