我々は、生体内組織形成術として無毒で非分解性の材料を鋳型として皮下に埋入することで、生体反応によりその周囲を被包化する結合組織をバイオチューブ人工血管として開発しているが、このバイオチューブには内皮細胞層が存在しないため移植後の血管組織への再構築化までの数ヶ月間は血栓閉塞の恐れがあった。本研究では、内皮や平滑筋の前駆細胞を含む細胞群(ADSC)を充填した多孔性円筒鋳型を皮下埋入することで、移植前にすでに内皮細胞や平滑筋細胞層を有する血管に近似したバイオチューブの作製に成功した。また、細胞の一体凝集化技術を開発し、ADSCの凝集体を移植時のバイオチューブに貼付することで、移植後わずか3週間の早期の血管組織への再構築化を達成した。生体内組織形成術に細胞工学技術を融合した本技術は、バイオチューブの人工血管としての有用性を高めるだけでなく、他組織の作製に対する新たな基盤技術にもなり得ると考えられる。
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