研究課題/領域番号 |
23H00048
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
渡部 敏明 一橋大学, 大学院ソーシャル・データサイエンス研究科, 教授 (90254135)
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研究分担者 |
大森 裕浩 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (60251188)
塩路 悦朗 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50301180)
新谷 元嗣 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00252718)
加納 隆 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90456179)
山本 庸平 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80633916)
中島 上智 一橋大学, 経済研究所, 教授 (20962062)
森田 裕史 東京工業大学, 工学院, 准教授 (70732759)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 不確実性 / ボラティリティ / マクロ経済 / 金融市場 / テキストデータ / 新型コロナウイルス / 気候変動 |
研究実績の概要 |
2023年度の研究計画は、Ⅰ.金融市場の不確実性指標の構築、Ⅱ.マクロ経済の不確実性指標の構築、Ⅲ.自然災害の不確実性指標の構築であった。 Ⅰについては、以下の研究成果が得られた。(1)多変量の株価の対数リターンについて、因子構造をもつ多変量確率的ボラティリティ変動モデルを構築し、さらに高頻度データを用いた実現ボラティリティや実現相関係数の観測方程式を追加して推定精度を高めることに成功した。提案モデルを用いてポートフォリオの最適化を行い、競合モデルよりもパフォーマンスが良いことが明らかになった。(2)新聞記事から日本国債市場の不確実性指標を構築し、この指標の上昇は日本の実体経済に負の影響を与えることを明らかにした。 Ⅱについても、以下の研究成果が得られた。(3)日米のマクロ経済に関する不確実性指標を構築し、金融市場の不確実性指標との関係について実証分析を行い、前者の指標の高低によって、後者の指標の変化が実体経済に与える影響に差異が生じることがわかった。 Ⅲについても、以下の研究成果が得られた。(4)新型コロナウイルスに関して、新聞報道等のテキストデータから、政策に関する不確実性指標と疫学的な不確実性指標を構築し、株式市場に影響を与えたのは前者であり、人の移動や消費など実体経済に影響を与えたのは後者であることを明らかにした。(5)グローバルな気候データを用いた分析では、昨今の持続的な熱波のリスクの高まりは気温の趨勢的上昇によるもので循環要因は変化していないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度の研究計画は、Ⅰ.金融市場の不確実性指標の構築、Ⅱ.マクロ経済の不確実性指標の構築、Ⅲ.自然災害の不確実性指標の構築であったが、Ⅱについて、既に日米のマクロ経済に関する不確実性指標を構築し、2025-2026年度に行う予定だった実体経済に与える影響の計量分析まで行った。Ⅲについても、新型コロナウイルスに関して、新聞報道等のテキストデータから、政策に関する不確実性指標と疫学的な不確実性指標を構築し、同じく2025-2026年度に行う予定だった金融市場や実体経済に与える影響の計量分析まで行った。また、査読付き英文学術誌に15本の論文が掲載され、著書2冊を出版し、国内外の学会・研究会で29回の報告を行った。これらのことから、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の研究計画は、2023年度に引き続き、Ⅰ.金融市場の不確実性指標の構築、Ⅱ.マクロ経済の不確実性指標の構築、Ⅲ.自然災害の不確実性指標の構築であるが、ⅡとⅢについては、既に日米のマクロ経済に関する不確実性指標や新型コロナウイルスに関する不確実性指標を構築したので、今後はそれらを精緻化する。Ⅰについては、その基礎となる資産価格のボラティリティに関する研究をさらに進め、その結果を用いて金融市場の不確実性指標を構築する。Ⅲについては、新たに震災などの自然災害や気候変動の不確実性指標の構築も行う。2025-2026年度に行う予定だったマクロ経済に関する不確実性がマクロ経済に与える影響の計量分析も既に開始したので、より精緻化したマクロ経済の不確実性指標や計量モデルを用いて、今後も研究を続ける。
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