研究課題/領域番号 |
23H00071
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研究機関 | 関西国際大学 |
研究代表者 |
濱名 篤 関西国際大学, 社会学部, 教授 (90198812)
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研究分担者 |
川嶋 太津夫 大阪大学, スチューデント・ライフサイクルサポートセンター, 特任教授(常勤) (20177679)
山田 礼子 同志社大学, 社会学部, 教授 (90288986)
森 利枝 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 教授 (00271578)
塚原 修一 関西国際大学, 客員教授(教育学部), 客員教授 (00155334)
深堀 聡子 九州大学, 未来人材育成機構, 教授 (40361638)
齊藤 貴浩 大阪大学, 経営企画オフィス, 教授 (50302972)
白川 優治 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (50434254)
合田 隆史 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 名誉教授 (70724764)
近田 政博 神戸大学, 大学教育推進機構, 教授 (80281062)
芦沢 真五 関西国際大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (00359853)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 大学教育の持続可能性 / 質保証 / 大学設置認可 / 大学設置・学校法人審議会の留意事項 / 認証評価制度 / 人口変動 / 留学生獲得 / 退場促進 |
研究実績の概要 |
日本の大学設置認可制度は質保証に大きな役割をはたしたが、設置における事前規制が大学の自由な発展を阻害した面があるとも指摘されてきた。本研究では設置規制と設置後の認証評価が、高等教育と社会全般に与えた影響(歴史的な意義)を分析し、諸外国との比較を行って、社会経済の転換期における大学の質保証と自由な発展の均衡・両立について考察する。 令和5年度は以下を実施した。1)国内では大学設置認可時の「留意事項」を分析した。これは大学設置・学校法人審議会から設置者(学校法人、自治体)への指導助言であり、履行状況の継続的な報告を求めて大学設置計画の確実な履行を担保するもので、平成16(2004)年度以降は公開されている。2)国外では米国、英国、ベトナム、マレーシア、台湾、韓国の調査を行った。日本を含むアジア諸国は、進学該当年齢人口の急減が喫緊の課題となり、大学の再編成を地域の活性化や産業の競争力強化と結びつけた総合的政策を展開しているが、国ごとに興味深い差異がある。米英は、人口変動を左右する国内外の学生の移動状況をみすえて、質保証制度の整備や大学の体質改善をすすめているようにみえる。 本研究は今日の重要な政策課題(大学の退場政策)とも直結することから、研究成果の発表と並行して関係者に向けた広報を行った。令和6年2月には私学高等教育研究所(日本私立大学協会附置)において公開研究会「日本の大学設置認可・定員管理・質保証は転換期にあったものか~国際比較から考える~」を開催し、国際比較の概要について情報を提供した。教育雑誌の座談会も行った。本年6月の大学教育学会第46回大会ではシンポジウム「大学教育は持続可能か?~ポストコロナ、急激な少子化、AIの脅威に日本の大学教育はどう立ち向かうのか~」を開催し、韓国の大学教育協議会前会長・東西大学校総長がシンポジストとして登壇する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内調査は、記録調査を中心とし、公開されている設置審による評価(審査結果、留意事項など)をもとに調査をすすめてきた。本研究では、留意事項が多かった事例を年代別にサンプル抽出し、①設置認可の際にどのような【留意事項】が質保証の懸念材料とされてきたのかを検証し、②認可の際に付された【留意事項】が、その後どの程度の期間でどのように改善されていたのか、を追跡調査し、分析をすすめた。 国際調査については、以下の6か国を対象に比較調査を実施してきた。①英国については、個別大学の定員管理及び留学生受入管理について調査をすすめ、学位授与権の有無による定員管理、留学生政策の違いを訪問調査で分析した。②韓国では、1963年に私立学校法が成立し、私学セクターに対して法的な要件が定められて以降、日本と同様に設置認可や定員管理について政府が強い統制を行なわれている。グローバル化にかかわる政府補助金に選定された大学への訪問調査で、設置認可、質保証管理、入口規制のメカニズム及び大学統合さらに産官学協力の実態を分析した。③ベトナムでは2019年改正教育法および関連法規の影響などを分析し、大学設置認可における政府の統制メカニズムが実際の大学現場においてどのような影響がでているかを調査した。④マレーシアでは、私立大学が21校(2010年)から50校(2021年)に急増しているが、質保証と設置認可に関連する法律(Malaysian Qualifications Act)以降の定員管理と留学生政策について、個別大学関係者へのヒアリングなどをもとに分析した。⑤米国ニューヨーク州における公立・私立の高等教育機関の設置、課程の改廃および質保証のメカニズムについて調査した。⑥台湾ではすでに大学の統廃合と定員削減が政府主導で進められているが、大学統合を行った国・公・私立大学を訪問調査して定員管理と質保証の現状を調査した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は国内および国外の調査と分析を継続する。外国出張旅費が上昇傾向にあり、それに留意して計画の微修正を検討する。国際比較研究においては、新たにタイを対象とする調査を実施する計画である。東南アジアで人口減少が始まりつつある一方で、大学数の減少と大学進学者の増加が同時進行するタイにおける大学の設置認可、定員管理、留学生政策について教育省及び個別大学訪問調査によって明らかにしていく。研究成果については、日本高等教育学会、大学教育学会などにおける学会発表を実施するとともに、成果を論文にまとめる。 令和5年度ならびに令和6年度に実施する国内調査と国際比較調査の成果をもとに、令和7年度において、海外の専門家を交え、二つの調査結果を総合的に分析するための合同研究会を実施する予定である。最終年度(令和8年度)に国内学会、国際学会における成果発表を行うとともに、報告書において、大学設置基準と設置認可システムにかかわる政策提言を行う計画である。
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