研究課題/領域番号 |
23H05460
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
竹内 哲也 名城大学, 理工学部, 教授 (10583817)
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研究分担者 |
上山 智 名城大学, 理工学部, 教授 (10340291)
田中 崇之 名城大学, 理工学部, 准教授 (10367120)
今井 大地 名城大学, 理工学部, 准教授 (20739057)
岩谷 素顕 名城大学, 理工学部, 教授 (40367735)
亀井 利浩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (90356824)
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研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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キーワード | 分極ドーピング / トンネル接合 / 面発光レーザー |
研究実績の概要 |
高濃度Mg添加Al0.35Ga0.65Nコンタクト層を用いた分極ドープ組成傾斜AlGaN(AlNモル分率0.9->0.35、Mg濃度5e18cm-3)によるホール素子にて、電極部以外のコンタクト層除去により、理論値の約3割(1.8e18 cm-3)の正孔濃度を再現性よく実証できた。一方、同じ成長条件・構造で分極ドープ組成傾斜AlGaNをMg添加なしで作製すると、高抵抗化し、正孔存在は実証できなかった。その後、いくつかの異なる条件でMgを添加しない分極ドープ組成傾斜AlGaNを作製したところ、理論値の2割の正孔濃度(1.0e18 cm-3)が実証でき始めた。AlN基板・テンプレート上の分極ドープだけでAlGaNにおいて正孔生成を観測した例は我々が知る限り、初めてである。 我々が確立した低抵抗GaNトンネル接合ではギャップ内光吸収が多く存在することがPDS法測定により明らかになった。特に、高濃度Mg添加層や高濃度Si添加層単体では光吸収は多くなく、高濃度Mg添加層と高濃度Si添加層の連続形成による、MgとSiのオーバーラップが多い領域で光吸収が多い状況である。これは、トンネル接合の低抵抗化と一致する方向であり、中間準位が多く形成されることでトンネル接合が低抵抗化することを示唆する初めての結果である。 発光デバイス実証として、深紫外LEDに分極ドーピングを適用、現状、Mgを添加した組成傾斜AlGaNでは比較的高効率(ウエハ上測定で1.5%)で発光するLEDが作製できた。また、GaN紫色面発光レーザーにおいて、分極ドーピングやトンネル接合を用いる前段階で、世界で初めて効率20%以上を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の成果により、順調に進展していると判断した。 ・AlGaNコンタクト層の適切な利用により再現性よく正孔存在が測定できるようになった ・Mg添加なし分極ドープのみで18乗台を超える正孔存在を実証 ・低抵抗トンネル接合内にはギャップ内光吸収、すなわち中間準位が多いことを観測 ・上記を適用するGaN紫色面発光レーザーにて世界最高電力変換効率を実現
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今後の研究の推進方策 |
さらなる成長条件の最適化により、Mg添加無し分極ドーピングのみで、できるだけ理論値に近い正孔濃度の実証を進める。分極ドーピングの効果が薄れる条件も探索し、逆符号分極電荷の抑制に繋がる可能性も視野に入れる。また、正孔実証の再現性に寄与した、高濃度Mg添加Al0.35Ga0.65Nコンタクト層に関して、正孔注入が可能にも関わらず、ホール電圧は負(n型と判断)であった。不純物バンド伝導ではホール散乱因子がもはや1ではなく負になる、すなわち正孔伝導であってもホール電圧が負になる場合があるという報告もある(ただしほとんどは200K以下の低温での測定)。Mg添加ではあるが、この理解が不十分な結果を正しく解釈できるようにし、さらなるワイドギャップ半導体の正孔伝導制御の可能性に繋げる。 ギャップ内光吸収の定量化を試み、その値とトンネル接合の抵抗との相関を明らかにする。その結果に基づいて、トンネル接合の低抵抗化に繋がる成長条件の方向性を見出す。 上記、Mg添加なし分極ドープ組成傾斜AlGaN層を深紫外LEDに適用し、Mg添加を極力抑えて光吸収を抑えた深紫外LEDを実証する。また、高効率GaN紫色面発光レーザーに、分極ドーピングやトンネル接合を用いて、さらなる効率改善を試みる。
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