| 研究課題/領域番号 |
23K00023
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| 研究機関 | 大阪経済大学 |
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研究代表者 |
稲岡 大志 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (40536116)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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| キーワード | ライプニッツ / 数学の哲学 / 図形推論 / 無限小幾何学 / 不可分者 |
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| 研究実績の概要 |
今年度は、ライプニッツのパリ時代の数学研究の集大成である論文『算術的求積』の数学的内容を検討する研究を行った。特に、『算術的求積』と、その下書きとして残されている遺稿との内容上の比較をおこない、ライプニッツがインデックス表記を効果的に活用して求積計算を進めていたのではないかという仮説を得た。インデックス表記の使用は暗黙のうちに無限個の整数を用いることを含意する点で、17世紀の数学者がどこまで自覚的に使用していたかを推し量ることは難しいが、この表記は幾何図形上での求積から代数的な計算手法による求積への橋渡しとして機能しているのではないか、すなわち、求積領域の無限分割と代数計算を可能にする役割がインデックス表記にはあったのではないか、という仮説が考えられた。この仮説の妥当性を検討するためには、まずは先行する数学者のテキストにインデックス表記が用いられていないかを調べる必要があるが、現時点では、シモン・ステヴィン、デカルトにインデックス表記が見られることが確認できた。ただ、この二人におけるインデックス表記の機能まではまだ特定できておらず、引き続きの検討が必要である。くわえて、パスカルがライプニッツに与えた影響についても最新の研究を参照にしたうえで、技法的なところまで解明することを試みた。
また、ライプニッツの無限小解釈について、現在のスタンダードな解釈となっている有限主義的解釈を提唱したHide Ishiguroによる著作や論文を検討し、その解釈の整合性について検討をした。その結果、Ishiguroによるライプニッツ研究は、同時代の言語哲学の成果を援用して、認識に関するライプニッツの統一的理論を構築する試みとして理解できること、そして、こうした統一的解釈の妥当性を、他ならぬIshiguroのライプニッツ研究を代表する無限小をめぐる議論が揺るがす可能性があることを示すことができた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ライプニッツの数学論文の研究だけではなく、ライプニッツの数学研究を歴史的に位置づけるための観点として、インデックス表記の使用という観点を得ることができた。もちろん、この観点が有用なものであるかどうかは今後慎重に検討を進める必要があるが、現時点では、数学史と哲学史の双方の観点から堅実かつ独創的な解釈が打ち出せる見通しがある。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は引き続きライプニッツのパリ時代の数学研究について、『算術的求積』を中心とした研究を進め、また、ライプニッツが実際に読んだ数学者たち（デカルト、パスカル、バロウ、など）のテクストの検討も行い、17世紀ヨーロッパ数学において、あくまでも図形に依拠したかたちで求積を行う無限小幾何学から、代数的計算によって求積を行う解析学に展開するに際して、図形や記号表記がどのような役割を担っていたのかを解明する研究を行う。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により国際学会の参加計画に変更が生じたため、2019年度から2022年度まで研究代表者として助成を受けていた基盤研究（C）（19K00032）の研究終了年度を一年後ろ倒しにした結果、2023年度の研究における本研究課題の助成金の使用がかなり抑えられ、次年度使用額が生じた。これらの使用計画としては、学会や研究会への参加旅費、研究に必要な図書の購入、英語論文の校正費などに充てる予定である。
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