研究課題/領域番号 |
23K00496
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
奥村 晶子 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (20899174)
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研究分担者 |
松本 和子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80350239)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | ディアスポラ言語変種 / 日系人 / コイネー / 多文化首都圏日本語 / Multicultural Japanese |
研究実績の概要 |
5か年計画の初年度の研究として、本年度の前半は茨城県常総市在住の南米人移民に関する調査を行ない、各世代から収集していた既存のブラジルポルトガル語データの分析を進めた。その研究成果を当該分野では著名な国際学術雑誌『Asia-Pacific Language Variation』(John Benjamins) へ投稿し採択された。研究の精緻を高めるため、11月にはベルン大学(スイス)の招聘講義にて研究成果を公表し、そこで得た有益なフィードバックを最終稿に反映させることができた。2024年夏の刊行予定である。 一方、本年度の後半は、南米人移民の日本語変種の研究に着手した。3度にわたり茨城県常総市で現地調査を実施し、南米人移民コミュニティの各世代、ペルー系を含むブラジル人約40名より、話者情報および単語の読み上げデータ、可能な場合は自然談話データを収集した。調査後は自然談話の録音の文字起こしを進め、単語の読み上げデータと共に音声分析および統計解析に取り掛かった。そうした研究成果を去る2月・3月に中間報告として公表した。移民言語からの音声転移に関する報告を東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所のシンポジウム「移動・国境・言語」にて、ホスト社会の地域方言の習得に関する報告を第48回社会言語科学会研究大会(福岡女子大学開催)にて公表したところである。現在はこれまでの研究成果を論文として書き上げながら、最新の統計手法を駆使した分析を展開しており、その内容を来る7月の国際学会Methods in Dialectology (La Trobe University) において報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の進捗はおおむね順調と言える。 計画していたブラジル・ペルーコミュニティにおける日本語の特徴を探る調査・分析に着手し、調査結果をまとめ、シンポジウムと学会で発表する段階まで進めることができた。また、ブラジルポルトガル語に関する研究についても、Strong-Rの変異と変化に関する分析結果を論文にまとめ、国際学術雑誌で採択されるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も継続して、茨城県常総市のブラジル人・ペルー人コミュニティでのポルトガル語と日本語の特徴を探る調査を行なっていく予定である。特にペルー人の話者はこれまで収集したデータでは人数が少ないため、より多くの被験者からデータを収集する予定である。また、ブラジル・ペルー人コミュニティにおける日本語の特徴との比較対象として、地元の日本人住民からの発話データ収集も同時に行なっていきたい。 さらに、これまでの分析結果を改善した論考が採択され、国際学会(Methods in Dialectology 18)にて発表することが決まっている。現在はその準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は国内での現地調査に注力し、海外での現地調査を行なえなかったため、旅費の支出に変更が生じた。
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