研究課題/領域番号 |
23K00559
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
安部 清哉 学習院大学, 文学部, 教授 (80184216)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 日本語学 / 語彙史 / 漢語史 / 漢語語基史 / 翻訳語 / 新漢語 / 和製漢語 / 近代理科教科書 |
研究実績の概要 |
◆漢語語基史研究・新漢語熟語史研究として安部(2024)『日本語における漢語語基史と新漢語史のための基礎的調査研究』(調査研究報告75、pp.291s.)の中で次の諸点をまとめ公表した。○漢語語基史の基礎的調査として、漢語語基「供」「奏」「支」「器」「反」「席」「卒」「貴」「円」「権」の新しい史的意味記述を公表した。○新漢語熟語史の基礎的調査として熟語「直線」「社会」「奇状」「貴重」「中性」「卒業」「支障」「呼吸器」「奏効・奏功」の登場が各漢語語基に及ぼした意味的影響について考察した。○新しい語彙史年表として「日本語史―語彙史 略年表」(統合版)を作成した。○漢語語基の調査方法に関して「2章 漢語語基史の基礎的調査研究と語基史を視野に入れた新漢語史調査の方法」を提示した。○今後の語基研究の方向性に関して「5章今後の研究にむけて――語基史研究から見る漢語史――」を提示した。 ◆「新常用漢字表」の漢字ついて=○その二千数百の漢字についてこれまでの作業(『日本語国語大辞典』の「字音語素」情報、単独用法の情報記載)に加えて、『字通』での意味情報の追記を継続した。○上記以外の新たな漢語語基について『日本国語大辞典』の「字音語素」欄の意味記述を改編する「漢語語基の意味の歴史的変遷」の記述を継続した。 ◆関連して漢語資料・漢語熟語に関する調査研究として、上代における漢語の研究の一環として、研究協力者(中山大輔氏)との共同研究である菅原道真の作品(菅家文草、菅家後集)における漢語畳語の用法とその和習についての調査と考察を中山大輔・安部清哉共著(2024)として2本公表した。 ◆明治期新漢語の資料として多くの語彙事例を掲載している近代理科教科書である中川重麗編著『博物学階梯』の諸本(6種)の比較研究を継続しかつ中川の業績調査(事績調査や資料収集=『新撰博物小学』購入と調査)等を継続した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
○海外での国際学会参加を計画していたが(欧州等、予定約40~50万円、航空券高騰見積り)、コロナ禍直後のため国際学会の種類や開催体制がコロナ以前の段階までには整っておらず、参加学会を検討(延期)する必要が生じた点が挙げられる。 ○2023年度5月以降コロナが5類扱いとなるに従い、諸学会活動や勤務大学業務がコロナ開けとなって急に従来のような活動体制に戻り、諸方面が新たな状況で多忙となった面があり、1次的に計画遂行とのスケジュール調整が必要となったため。
|
今後の研究の推進方策 |
1)「漢語語基史」の為の作業継続=○「新常用漢字表」(二千数百字)の漢字について、漢語語基としての用法を順次調査、分析、考察する作業を継続する。○上記のための基礎データとして漢語語基1字(1語)毎に基本的情報を付加した「新常用漢字表の漢語語基の基礎情報データ」作成を継続する(2023年度の『字通』情報の追加作業を継続する。その他の追加すべき情報を模索する(例えば候補としてはテキストデータ化した『漢和大辞典』)。○その他の重要情報として追加すべきデータの探索。 2)「新漢語熟語史の研究」の為の作業=○国会図書館のデジタルアーカイブスで検索できる文字化データが増加しているのでその効率的な検索方法を模索する(現在そのOCR読み取りの精度はまだ低く活用するには非常に効率が悪いが、より効率的活用を検討する)。○近世以前の用例収集に関して、上記以外での漢語熟語用例の収集方法を探索し工夫する。 3)中川重麗編著の近代理科教科書とその語彙調査=○『改訂増補博物学階梯教授本』(明治13年、1880年版)の翻刻作業(継続)、そのルビの翻刻の点検およびルビの索引作成、漢語熟語索引作成、個々の重要漢語の語史調査などを継続する。○『博物学階梯』シリーズの6種の諸本の比較調査の継続。○中川重麗編『新撰博物小学』の調査。 4)個々の漢語語基史における意味的転換点となっている漢語熟語について、中国(また韓国)での用法に関する情報を収集する。(意味、用例、初出例の年、出典、中国製か日本製か韓国製かなど)。 5)近年中国の大型辞書類において特に中国の近代現代の漢語の歴史的経緯に関する記述や情報が充実してきているので、それら中国新辞書における近代中国語記述情報について最新の情報や資料を収集する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
【繰越理由】○海外での国際学会参加を計画していたが(欧州等、予定約40~50万円、航空券高騰予想)、コロナ禍直後のため国際学会の種類や開催体制がコロナ以前の段階までにはまだ整っておらず、内容的に参加学会を検討(延期)する必要が生じたため。○学内の他の研究プロジェクト(複数)の進行とのスケジュール調整が必要となった。 【使用計画】○使用計画としては、ア:国際学会参加(海外出張旅費)、イ:新たに見出した調査作業の増加(謝金)等で消化される見込みである。
|