研究実績の概要 |
語彙を文法的なルールに従って配置することで文が完成する。しかし、語彙と文法の知識で文を作るレベルで意味内容を理解したとしても、次の文との連続的な意味関係を理解できなければ、複数の文の連続で構成されるテキスト全体の意味内容を把握することはできない。本科研では、語彙と文法の知識からテキスト理解を促進する仲介的な能力として、文間推論能力を想定した。2023年度は、文間推論能力を因果関係、指示詞、間接発話の3つに絞って考察した。語彙知識と文法知識を基にして,文間推論能力を介して,聴解および読解のテキスト理解が促進されるとする「逐次モデル」と語彙および文法知識も文間推論と同時にテキスト理解に貢献するとする「並列モデル」を想定した。そして,中国の大学で日本語を専攻する281名の被験者を使って構造方程式モデル(SEM, Structural Equation Modelling)で検討した。その結果,文間推論能力が語彙知識を基に作られた文の連続を意味的に連結して、テキストの理解を促進するという「逐次モデル」の因果関係の存在を実証した。この研究は、Tamaoka, Katsuo, Hiromu Sakai, Yayoi Miyaoka, Hajime Ono, Michiko Fukuda, Yu Xin Wu & Rinus Verdonschot (2023). Sentential inference bridging between lexical/grammatical knowledge and text comprehension among native Chinese speakers learning Japanese. PLOS ONE, 18(4): e0284331. DOI: 10.1371/journal.pone.0284331に掲載された。PLOS ONEは、インパクトファクターが3.75の非常に学術レベルの高い国際的な学術誌である。
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