研究実績の概要 |
本研究課題に関して令和5年度に実施した研究は、主に以下の2つの成果をもたらした。1つ目は、本研究において重要な要素である県参事会員の属性(出身地、生年月日、出自、学歴)に関する個人データの収集をおこなったことである。具体的には、フランス国立文書館所蔵の分類番号F/1bI/155~180, F/1bI/297~400, F/1bI/436~530「県参事会員の個人情報:1800~1912年」、そして、ピレネー=オリアンタル県文書館所蔵の分類番号2M3, 4, 13, 14「県参事会員の個人情報」において、19世紀のピレネー=オリアンタル県参事会員46名と、マイエンヌ県参事会員35名に関する史料収集をおこなうことができた。 2つ目は、上記の海外調査で収集した史料の分析を基に、フランスの辺境に位置し、名望家層の影響力が少ないピレネー=オリアンタル県(ラングドック=ルシヨン地域)でも、七月王政期とは異なり、第二帝政期の県参事会員の経歴において、よりシステマチックな養成が実践されていたことが数値的・類型的分析から明らかとなった。一方で、県参事会員の登用においては、ピレネー=オリアンタル県における属性主義と能力主義は,第二帝政期を通じて併存しており,地方の支配階層における「旧体制から続く名望家」から「専門職化された近代的行政官」への変化は,より多面的な様相を呈していたことが明らかとなった。 ここで得られた研究成果は、「データ分析にみる近代フランス地方幹部候補行政官の性質変化―ピレネー=オリアンタル県参事会員を事例として―」として、『歴史学研究』2024年6月号に掲載されることとなった。
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