研究課題/領域番号 |
23K01910
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
米倉 裕希子 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 准教授 (80412112)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 障害福祉 / 自立支援協議会 / 知的障害 / 当事者参加 / 権利 / 啓発 |
研究実績の概要 |
日本における障害者権利条約の批准、総括所見を踏まえ、知的障害者の権利にまつわる取り組みを促進させるため、自治体に設置されている「自立支援協議会」を対象に、自治体に設置されている協議会における障害者の権利に関する取り組みの現状と知的障害者の参画や障害者の権利に関する周知、啓発の取り組みに関する横断研究を行った。 調査対象は、 1741の自治体(政令指定都市、一般市、町村)である。回答は、460の自治体(回収率は26%)で、 そのうち、同意にチェックが付いていた385(83.7%)を分析対象とした。 自立支援協議会での権利擁護部会の設置「有」は154(40%)で、障害当事者の参加「有」は273(71%)だったが、知的障害者は24(6%)だった。「差別解消法」に関する取り組みを「行っている」は193(50%)で、「相談体制の構築」(n=98)、「啓発活動」(n=93)と最も多く、「当事者向けの情報提供」はn=28 だった。また、「虐待防止法」に関する取り組みを「行っている」が215(56%)で、「相談体制の構築」(n=130)が最も多く、「障害当事者向けの情報提供」がn=29だった。効果が期待でき取り組みたいと思う啓発活動で、平均値が高いのは「講演会など」2.6±1.0(n=374)や「学校教育への参加」2.6±1.1(n=372)で、「当事者との共考、共創イベント」は2.5±1.0(n=371)だった。権利に関する取り組みへの全般評価の平均は1.81±0.85(n=380)だった。 自立支援協議会への障害当事者の参加は多いが、知的障害当事者は少なく、自治体規模との相関はなかった。また、障害者権利条約に関するパンフレット等の作成や障害当事者向けの情報提供を行う協議会は少なく、自治体規模との相関はみられなかった。 今後、分析をすすめ権利に関する取り組みの現状の課題を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、4年間のうち前半の2年間でステップ1として、知的障害者が権利について理解する取り組みの現状を把握するための調査研究として、(1)自立支援協議会、(2)障害福祉サービス事業所を対象とした横断研究、(3)当事者活動や先駆的な取り組みに関するインタビュー調査等の3つを予定していた。 1年目では、(1)の自立支援協議会を対象とした横断研究を実施した。当初予定していた都道府県および政令指定都市における自立支援協議会ではなく、対象をより身近な政令指定都市および市町村に拡大し、大規模な調査を実施したため、予算上、(2)(3)の着手までに至らなかった。また、調査研究の実施で終わり、学会での発表や論文にまとめることができなかった。そのため、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では,前半の2年間で計画していた (1)自立支援協議会を対象とした調査に引き続き、知的障害者が権利について理解する取り組みの現状を把握するため、(2)障害福祉サービス事業所を対象とした横断研究、(3)当事者活動や先駆的な取り組みに関するインタビュー調査等のうち、2年目は、(3)の調査の遂行と、予算の状況をみながら(2)の調査準備を行いたいと考える。 (3)の先駆的な取り組みについては、新型コロナ等の影響により,実施が中断し再開していないなどの場合が考えられる。その場合は、知的障害当事者を対象としたインタビュー調査に変更して行う。また、実施した調査研究を論文や学会等で積極的に報告する。 研究計画の後半の2年間では、権利ノートの作成及び権利教育プログラムの実践研究を予定している。そのため、今年度はその準備に取り掛かる。
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次年度使用額が生じた理由 |
自立支援協議会の調査が当初の予定より大規模で実施することになり、予定していた2つ目の調査が実施できなかった。また、自立支援協議会の調査では、調査への協力を得た自立支援協議会へ結果のフィードバックとして結果概要の送付を予定している。次年度使用額は、未実施の調査及び自立支援協議会への結果フィードバック郵送費として使用する予定である。
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