研究課題/領域番号 |
23K02465
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
奥泉 香 東京学芸大学, 教育学部, 特任教授(Ⅰ種) (70409829)
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研究分担者 |
松下 達彦 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, 教授 (00255259)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マルチモーダル / 複モード / 教材 / 国語科 / 挿絵 / ジャンル / 図像 |
研究実績の概要 |
本研究の中核となるマルチモーダル・テクストの分析を、以下の2点に焦点を当てて行った。1点めは、対象となる教科書教材をロイス(Royce,2007)に整理・提示されている文章と周辺に採録されている図像との関係の整理の中から、本研究に必要と考えられる5分類を用いて検討・分類した。その5分類とは、(1)「反復関係」(2)「同義関係」(3)「反意関係」(4)「上位-下位関係」(5)共起関係である。 上述の関係分析を行ってみると、(1)の「反復関係」と(2)「同義関係」が圧倒的に多く、学年が上がるにつれて「上位-下位関係」が増加することがわかった。特に教材のジャンルでは、文学的教材において(1)の「反復関係」と(2)「同義関係」の二種類が多いことが確認できた。しかし、小学校段階の教科書教材と比較すると、中学校では文学的文章教材における挿絵等の図像は枚数が減少し、そのためどの場面を選んで挿絵等の図像をつけるかの選択にバリエーションがみられた。また、提示される挿絵の描き方も具体的場面から抽象的な挿絵まで、必要とされる解釈の仕方も多様になっていることが確認できた。 2点めは、説明的文章教材に焦点を当てると、(Royce,2007)の分類における「上位-下位関係」が、中学校では頻出してくることもわかった。この種の教材文と周辺に配置されたモデル図等の図像との関係は、その読解過程に思考の抽象度の調節を伴うことが必要とされるため、開発を目指すガイドブックにおいても、当該箇所の記述を丁寧に行う必要性が明確となった。また、モデル図のような図像には、バービエッジと呼ばれる短い言葉の説明やキーワードがつけられている場合が多く、それらを統合した読解方法の解説も必要であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は計画に沿ってほぼ順調に進めることができている。特に教科書教材の分析に、上述したロイスの5分類を活用したことで、「反復関係」や「上位-下位関係」「共起関係」といった共通の観点で、教材文と周辺の図像との関係を要素間分析できている。このことによって、教材文のジャンルや配当学年による図像-文章間の関係性の傾向や、系統性の分析・検討を段階的に進めやすくなっている。 また、説明的文章教材についても、(Royce,2007)の分類における「上位-下位関係」が中学校では頻出してくるため、この種の教材文と周辺に配置されたモデル図等の図像との関係に焦点を当て、その読解過程に必要とされる思考の抽象度の調節についても整理を進めている。また、バービエッジと呼ばれる機能文法の用語を活用することで、図像に付記されているキーワードの役割や、それらを統合的に解釈・読解する方法についても分析や整理が進展できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は上述の5分類を基軸に、教材文のジャンルによって、文章と図像との「反復関係」や「同義関係」、「上位-下位関係」といった要素間の関係が、どのように学年や学習時期によって布置されているのかを分析・整理する予定である。また、その際文学的文章教材に採録されている挿絵については、教科書会社による同教材中の挿絵の位置の違いや、関連させて読解する必要のある教材文の範囲も併せて分析・整理する予定である。これらの挿絵の位置は、その描かれ方とも関わって、設定されている視点も異なっている場合が多く、先述の挿絵の位置と関連させて読む必要のある教材文の範囲と併せ、これらの要素を統合的に読解できるよう支援が必要とされるポイントとなり得ると考えられるからである。 また、説明的文章教材では、引き続き(Royce,2007)の分類における「上位-下位関係」に焦点を当て、この種の教材文と周辺に配置されたモデル図等の図像との関係を、関連づけて読解できるよう、その読解過程で必要になると考えられる抽象度の調節に関わる思考の種類も整理する予定である。さらに、モデル図のような図像には、バービエッジと呼ばれるキーワードや短い説明がつけられている場合が多いため、それらの機能についても種類を分析・整理する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた海外調査が、先方の体調により次年度に延期になったため、次年度にその調査に必要な予定額を使用する予定である。先方とは、この件についてオンライン会議等で協議済みである。
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