研究課題/領域番号 |
23K03115
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
笹平 裕史 九州大学, 数理学研究院, 教授 (30466825)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
キーワード | Seiberg-Witten Floer理論 / 低次元トポロジー |
研究実績の概要 |
Seiberg-Witten Floer安定ホモトピー型という3次元多様体の不変量の研究を行った。Seiberg-Witten Floer安定ホモトピー型とは、モノポールFloerホモロジーと呼ばれる重要な不変量の精密化である。モノポールFloerホモロジーは多くの計算例があり、さまざまな重要な応用が知られている。一方、Seiberg-Witten Floer安定ホモトピー型は、いくつかの重要な応用が知られているものの、計算が難しく、応用の範囲は限定的であった。 DaiとStoffregenとの共同研究により、almost rationalという条件をみたすplumbing 3次元多様体に対して、Seiberg-Witten Floer安定元ピー型を計算することに成功した。この3次元多様体のクラスは、第一Betti数が0のザイフェルトファイバー空間を含み、多くの例がある。これまでSeiberg-Witten Floer安定ホモトピー型の計算は、ザイフェルトファイバー空間の特殊な場合のみであったが、本研究により、具体的計算例が広がった。また、この計算の結果、境界付き4次元多様体の交差形式への応用を得ることができた。また、今野氏とは、3次元多様体の族に対するSeiberg-Witten Floer安定ホモトピー型の応用に関する共同研究を行った。その結果、境界付き4次元多様体の微分同相群に関する幾つの応用を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標の一つはSeiberg-Witten Floer安定ホモトピー型の計算を行うことであったが、これまでの研究により、広いクラスの3次元多様体に対して、計算を実行することに成功した。さらにその計算により、4次元トポロジーにおいて重要な交差形式に対して、非自明な応用を得ることができた。また、3次元多様体の族のSeiberg-Witten Floer安定ホモトピー型は、境界付き4次元多様体の微分同相群に関して、応用を持つことを明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によってSeiberg-Witten Floer安定ホモトピー型の新しい計算例を得ることができた。しかし、その3次元多様体は第一Betti数が0である。第一Betti数が正の場合に、計算を拡張することを今後研究していくことにする。その計算を用いて、低次元トポロジーのさらなる応用を行う予定である。これを行うには、第一Betti数が正の3次元多様体に沿って4次元多様体が分割されるときのBauer-Furuta不変量の張り合わせ公式が必要になると考えられる。この張り合わせ公式を証明することを当面の目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により研究集会等がオンラインになったりしたため旅費の使用が減り、昨年度の科研費からの繰越があった。そのため、今年度分の予算を執行する額が、当初の計画より少なくなり、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、コロナの影響で対面での議論ができていなかった研究打ち合わせを対面で行ったり、研究集会を開催したりするために使用する予定である。
|