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2023 年度 実施状況報告書

非保存系の非線形シュレディンガー方程式の解の挙動に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K03168
研究機関熊本大学

研究代表者

北 直泰  熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (70336056)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワード非線型シュレーディンガー方程式 / 解の漸近挙動 / 解の減衰評価 / 2乗ノルムの減衰 / 一様ノルムの減衰
研究実績の概要

■【Journal of Mathematical Sciences に掲載決定】Hayashi-Li-Naumkin の結果では、強消散条件と呼ばれる強い消散性劣臨界ベキ p の非線形項をもつ空間 N 次元シュレーディンガー方程式の解(サイズの制限なし)が L^2-ノルムの意味で減衰オーダーが O(t^{-d}) (ただし、d = 1/(p-1) - N/2) になることが示されている。本研究では、強消散条件を省いて、通常の消散性をもつ方程式でも、初期データのサイズの制限なしに、解の L^2-ノルムが上記と同等の減衰オーダーを示すことを証明できた。証明の手法は、方程式の両辺に解の時刻微分(の複素共役)を掛けて導くエネルギー評価である。
■【国際研究集会ISAACの proceedings に掲載決定】北-中村-佐川による共同研究では、連立系消散型非線形シュレーディンガー方程式の解に対して、L^∞ノルムの減衰評価(減衰オーダー O(t^{-1/2}(log t)^{-1/2}))を得ている。令和5年度の研究では、この減衰オーダー O(t^{-1/2}(log t)^{-1/2}) が最適なものである事を示した。ここで「減衰オーダーが最適である」とは、方程式の解が t → ∞ のときに、もし t^{-1/2}(log t)^{-1/2} よりも早く 0 に潰れたと仮定すると、その解は恒等的に 0 (自明解)になることと意味する。証明の手法は次の3つのステップからなる。(Step 1) 解の L^2-ノルムの減衰について、上からの減衰評価と下からの減衰評価を示す。(Step 2) 実は、上からの減衰評価のほうが下からの減衰評価よりも早く減衰するので、これから解がある時刻で 0 になっていることが示せる。(Step 3)過去に向かって方程式を解くことで、自明解であることを示す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

■近年、熊本大学には非線形分散型方程式を専門とする若手の研究者と博士課程の学生が多数所属するようになった。そのため、当該研究に関する意見交換が活発化し、様々なアイデアが若手研究者から提出されるようになった。本研究代表者が教育や組織運営で多忙を極めているときには、若手研究者と学生が論文の執筆にあたる体制が自然発生的に構築されたことが、研究を順調たらしめている主な要因である。
■日本には非線形分散型方程式を専門とする研究者や学生が他国に比べて多く存在している。最近、本研究代表者の研究対象である消散型非線形シュレーディンガー方程式に関心を寄せる研究者が現れ始めて、メールやZoomで共同研究が活発に行われるようになった。
■実は、フランスや韓国の研究者も本研究代表者と同じ方程式を取り扱っていることが判明し、自ずと鎬を削る状況になっている。特に、フランスの研究者は自分の研究室に数名の研究生と博士課程学生を受け入れて、チームで問題を解決するスタイルを取っている。これと似たような状況が、現在の熊本大学にも出来上がっていることが、研究を順調に推し進められている原因なのだろう。

今後の研究の推進方策

■(1)強消散条件を省いて、大きな初期データでも解の減衰評価や漸近挙動を導出する。attractive な非線形項の場合に困難が付きまとっているので、この困難を乗り越える手法を編み出す。(2)今まで非線形シュレーディンガー方程式の非線形 Kerr 効果を表す部分と非線形消散効果を表す部分でベキが等しい場合を取り扱ってきた。これらのベキを違えて、より一般的な非線形項で解の減衰評価や漸近挙動を導く。そして、解のサイズの制限を取り払うために、どのような条件が有用なものになるのか見定める。(3)非線形項が増幅効果を有する場合、Kawakami-Machihara により、「強増幅条件」の下で、小さな初期データであっても有限時刻で爆発する解の存在が示されている。この「強増幅条件」を外して同様の爆発解の存在を示す。(実は、強消散条件を外して大きな初期データであっても解の減衰をしますことができたので、この結果を利用することで証明ができそうなところまで到達している。)(4)Kinetic 非線型シュレーディンガー方程式の解の漸近挙動を導出する。(あらかた証明はできているが、解の時刻に関する連続性の部分で困難がある。証明の手法がエネルギー法に依存しているため生じる困難である。これをどのように克服すべきか?)
■消散型非線形シュレーディンガー方程式では、Ogawa-Sato により、解の正則性が L^2-ノルムの減衰を改良することが知られている。現在 Sato によって、解が解析的である場合に最良のL^2-減衰オーダーが得られている。解析性を超える滑らかな関数空間で解を構成できれば、L^2-減衰オーダーがもっと改良されていくはずだが、そのような関数空間では時間局所解を構成することさえ難しい。もしかすると、解析性を超える非常に滑らかな関数の空間では、非線形効果により解が非適切になるのではないか。

次年度使用額が生じた理由

熊本大学の物品購入システムで「経費別差引簿」を見ると、令和5年度の予算1,700,000円のうち支出が1,596,528円、残額が103,472円となっている。これは、令和6年3月にモンゴルの研究者を熊本大学に招聘したときに、航空券を先方で一旦購入していただく処置をとった。モンゴル通貨と日本通貨の価値の違いから、予想よりも安い金額で航空券を購入することができた。そのため、103,472円の残額が生じた。この残額を令和6年度の予算に繰り越すことで、モンゴルにて開催される国際研究集会での研究成果発表のために使用する予定である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 7件、 招待講演 11件) 学会・シンポジウム開催 (2件)

  • [国際共同研究] National University of Mongolia/MUST(モンゴル)

    • 国名
      モンゴル
    • 外国機関名
      National University of Mongolia/MUST
  • [雑誌論文] L2-decay of solutions to dissipative nonlinear Schrodinger equation with large initial data2024

    • 著者名/発表者名
      Jadamba Gerelmaa, Naoyasu Kita, Takuya Sato
    • 雑誌名

      Journal of Mathematical Sciences

      巻: 279 ページ: 814-823

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Optimal L∞-decay rate of solutions to a dissipative nonlinear Schrodinger equation system2024

    • 著者名/発表者名
      Naoyasu Kita, Yoshihisa Nakamura, Yuji Sagawa
    • 雑誌名

      Proceedings of the 14th International ISAAC

      巻: accepted ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] Decay estimate of solutions to dissipative nonlinear Schrodinger equations2024

    • 著者名/発表者名
      Naoyasu Kita
    • 学会等名
      Japan-Mongolia Joint Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] 消散型非線形シュレーディンガー方程式の解の減衰評価について2024

    • 著者名/発表者名
      北 直泰
    • 学会等名
      Saga Workshop on Partial Differential Equations
    • 招待講演
  • [学会発表] 非線型消散効果と非線形増幅効果をもつシュレディンガー方程式の解の挙動I, II2024

    • 著者名/発表者名
      北 直泰
    • 学会等名
      第7回 PDE Workshop in Miyazaki
    • 招待講演
  • [学会発表] 強消散条件を弱めた非線形消散型シュレーディンガー方程式の 解の減衰について2023

    • 著者名/発表者名
      北 直泰
    • 学会等名
      現象と数理 北九州小研究集会
    • 招待講演
  • [学会発表] L2-decay estimate of solutions to repulsive-dissipative nonlinear Schroedinger equations2023

    • 著者名/発表者名
      Naoyasu Kita
    • 学会等名
      The 20th Linear and Nonlinear Waves
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] L2-decay estimate of solutions to dissipative nonlinear Schrodinger equations without strong dissipative condition2023

    • 著者名/発表者名
      Naoyasu Kita
    • 学会等名
      Critical Phenomena in Nonlinear Partial Differential Equations, Harmonic Analysis, and Functional Inequalities
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Decay of solutions to the dissipative nonlinear Schrodinger equation with large initial data2023

    • 著者名/発表者名
      Naoyasu Kita
    • 学会等名
      INTERNATIONAL CONFERENCE ON COMPUTATIONAL AND APPLIED MATHEMATICS
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Large time behavior of solutions to a system of dissipative nonlinear Schrodinger equations2023

    • 著者名/発表者名
      Naoyasu Kita
    • 学会等名
      第 48 回偏微分方程式論札幌シンポジウム
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 消散型非線形シュレーディンガー方程式系の解の減衰評価と漸近挙動について2023

    • 著者名/発表者名
      北 直泰
    • 学会等名
      第115回 岐阜数理科学セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] Asymptotic behavior of solutions to a system of nonlinear Schrodinger equations with cubic dissipative nonlinearity2023

    • 著者名/発表者名
      Naoyasu Kita
    • 学会等名
      14th ISAAC Congress (2023)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Decay estimate and asymptotic behavior of solutions to the system of Schrodinger equations with cubic dissipative nonlinearity2023

    • 著者名/発表者名
      Naoyasu Kita
    • 学会等名
      International Conference on Applied Science and Engineering 2023
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 連立消散型非線形シュレディンガー方程式の大きな初期データに対する解の減衰評価と漸近挙動2023

    • 著者名/発表者名
      北 直泰
    • 学会等名
      RIMS共同研究 グループ型A 「線形及び非線形分散型方程式に関する近年の進展」
    • 招待講演
  • [学会・シンポジウム開催] Japan-Mongolia Joint Workshop 20242024

  • [学会・シンポジウム開催] 幾何学的偏微分方程式に対する正則性特異性とその周辺2024

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公開日: 2024-12-25  

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