研究実績の概要 |
関数方程式の解に対し,効率的な計算機援用非存在証明法を開発するために,2023年度には計画通りキー定理の導出を行った.従来は,非存在証明を行うための候補となる集合を,無限次元空間のみで検討していた.それに対し,非存在を検証するための候補となる集合をコンピュータで計算可能な有限次元部分と計算が不可能な無限次元部分に分割し,有限次元部分については,可能な限りコンピュータで評価することで,従来手法よりも効率的なアルゴリズムとなりえるキー定理を構築した.これにより,従来に比べ繊細な計算が可能になると考えられる.加えて,従来は不可能であった基底の係数レベルで有限次元部分については具体的に解が存在しない区間を把握できることにも成功する. さらに,計算機援用非存在証明法を利用する際に必要となる射影誤差定数についても,新たな公式を導出し,以下の論文として出版された: “抽象的なHilbert空間の有限次元部分空間への直交射影の誤差に対する最良定数”, 日本応用数理学会論文誌, 34巻1号, pp.19-32, 2024/3/25, doi.org/10.11540/jsiamt.34.1_19 上記論文では,抽象化されたHilbert空間上に対し,射影誤差定数の最良定数が無限次元部分の固有値問題に帰着してかけることをしめした.これにより,キー定理の導出だけでなく,アルゴリズム内で利用する具体的な定数でも計算機援用非存在証明法の効率化をはかれるようになる.
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