研究課題/領域番号 |
23K03612
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山口 智実 関西大学, システム理工学部, 教授 (10268310)
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研究分担者 |
古城 直道 関西大学, システム理工学部, 教授 (80511716)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超仕上げ / 固定砥粒研磨 / 超平滑加工 / 硬脆基盤材料 |
研究実績の概要 |
(Ⅰ) 超仕上げによる加工面生成モデルの構築:従来の超仕上げの加工量や表面粗さのモデル化においては,砥粒や工作物の弾性は考慮されているが,加工中のそれらの動的弾性挙動は考慮されていない.そこで,本年度は,砥石の弾性を考慮し,1つの砥粒が加工面に切り込みながら運動するバネマスダンパ系の1砥粒モデルを構築し,除去量や粗さにおいて,シミュレーションと実際の加工との比較を行った.その結果,加工速度に対する前加工面の周波数と砥粒の弾性固有周波数との大小による加工特性の特徴が一致することが確認された. (Ⅱ) 超仕上げにおける表面下損傷(SSD)の発生モデルの構築:本年度は,石英ガラスにおいて確認された白濁部がビッカース圧子押込みモデルより,塑性域を示していると推定し,形状の確認のために白濁部の可視化と,その部分に対し構造解析ソフトにより解析した応力分布と比較を行い,塑性域との関連性を確認した.その結果,この白濁部は,塑性域全体ではなく,塑性域の強い圧縮応力がかかっている部分に発生していると考えられることがわかった. (Ⅲ) MC/MC複合砥粒砥石の目直し条件が砥石作業面性状に及ぼす影響の解明:本課題では,軟質な硫酸バリウム砥粒を含むMC複合超砥粒砥石(以下,MC砥石)を対象とし,今まで明らかにされていなかったMC砥石における超仕上げ機構の推定を行った.本年度は,複数の硫酸バリウム砥粒量,硬さを持つMC砥石を用いて単結晶シリコンの超仕上げ性能の調査とSEMによる砥石表面の硫酸バリウム砥粒および結合剤の変化を観察した.その結果,(i) 軟質な砥石では,超仕上げ中に硫酸バリウム砥粒や結合剤の脱落によるMC作用,機械的除去作用が得られ,効率的な工作物除去が実現される,(ii) 一方で,超仕上げ中に硫酸バリウム砥粒や結合剤の脱落が少ない砥石では工作物除去は進みにくい,ことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(Ⅰ) 超仕上げによる加工面生成モデルの構築:一般に,加工面の加工特性は,加工方向と(加工方向に垂直な)送り方向の2方向に対するモデル化を考える必要があるが,今回,加工方向において,最も単純と思われる1砥粒のバネマスダンパ系モデルで加工特性の特徴がほぼ一致したことから,残りの送り方向に対するモデル化に集中することができるので. (Ⅱ) 超仕上げにおける表面下損傷(SSD)の発生モデルの構築:本課題は,光学ガラスへの圧子押し込みによるSSD発生原理の力学的メカニズムを3次元的な応力分布を観察することよって,損傷深さの予測を行うことを目的としてきたが,元来破断面であるSSDの解析法として構造解析ソフトが妥当かどうかという問題があった.しかし,本年度,偶然に見出された白濁部の調査・解析を行うことで,SSD発生直前の塑性域に対しての従来の解析が有効であることが明らかになったので. (Ⅲ) MC/MC複合砥粒砥石の目直し条件が砥石作業面性状に及ぼす影響の解明:本課題では,硫酸バリウムのMC複合砥粒砥石による単結晶シリコンの超仕上げを対象とし,目直し条件と超仕上げ砥石の作業面性状との関係性を解明するが,その前に望まれる砥石の作業面性状を確認しておく必要がある,本年度では,砥石の作業面特性と除去性能との関係性を明らかにすることができたので.
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今後の研究の推進方策 |
(Ⅰ) 超仕上げによる加工面生成モデルの構築:送り方向に対する加工面は,複数の砥粒軌跡が関係してくるため,それらの軌跡を幾何学的観点から捉えることで加工面の生成モデルの構築を行う. (Ⅱ) 超仕上げにおける表面下損傷(SSD)の発生モデルの構築:現在のところ,ガラスにおけるSSD発生原理の力学的メカニズムは,圧子の押込みによるSSDにおいてのみであるので,今後,砥粒加工の引っ掻きによるSSDの発生メカニズムの解明に取り組んでいく. (Ⅲ) MC/MC複合砥粒砥石の目直し条件が砥石作業面性状に及ぼす影響の解明:硫酸バリウムのMC複合砥粒砥石による単結晶シリコンの超仕上げを対象とし,ドレッサの作業面積率と砥粒突出し量,およびドレッサ砥粒の軌道が砥石作業面性状―各砥粒の作業面積率,各砥粒の突出し量,連続切れ刃間隔等―に与える影響を調べ,目直し条件と超仕上げ砥石の作業面性状との関係性を解明し,本年度明らかにした除去性能に優れた作業面性状を得られるための目直し条件を明らかにしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
課題(Ⅱ) 「超仕上げにおける表面下損傷(SSD)の発生モデルの構築」において,本年度,偶然に見出された白濁部に対しての調査・解析を優先したことで,当初予定していた圧子押し込み実験が後回しになり,その分の実験材料費などが余ってしまった.したがって,次年度は積み残した研究実験も含めて研究を進めていく予定である.
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