研究課題/領域番号 |
23K03634
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
北山 哲士 金沢大学, 設計製造技術研究所, 教授 (90339698)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 最適設計 / 鍛造 / 機械学習 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
複雑な形状を有し高精度・高強度が要求される部品を製造するためには熱間多段鍛造が有効である.この方法では,ビレット形状や金型温度,ストローク長などのプロセスパラメータや,中間金型形状が品質に影響を与えることが知られている.本研究では,はじめに鍛造の最適設計において要求される事項を,目的関数と制約条件の観点からまとめ,鍛造シミュレーションで注意すべき点を整理する.設計上変更可能な設計変数については,鍛造プロセスの特徴を考慮して個別に決定する.その後,シミュレーションと数理工学的手法,機械学習を融合した技術を用いることで,①欠肉のない鍛造部品を製造するための最適なビレット形状やプロセスパラメータを決定し,この研究成果を基に,②成形荷重を抑制するような中間金型形状の設計法の開発を行う.最後に③バリや欠肉と中間金型形状と工程数の関係の推定式の開発に取り組み,これらを包括して,熱間多段鍛造における中間金型形状とプロセスパラメータの統合設計法を確立する.鍛造シミュレーションを活用した最適設計を実施するため,申請者が独自に開発した機械学習を活用した最適設計法を用いる.中間金型形状の設計法の開発には,ノンパラメトリック形状最適化法の一つであるベーシスベクトル法を用いる.鍛造プロセスの最適設計法はパラメトリックに考え,同時に形状最適化にはノンパラメトリック手法を用いるため,パラメトリックとノンパラメトリックの方法が混在する最適設計法を開発することになる.本研究のさらなる応用として,油圧式ハンマー鍛造の最適設計にも展開し,その妥当性と有効性をシミュレーション及び実験の両面から,既存技術と比較して実証する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鍛造における最適設計の重要事項は,①欠肉のない部品を成形すること(基本的には制約条件として扱う),②材料歩留まりの観点から,バリを抑えるようなビレット形状を決定すること(目的関数),③金型の長寿命化のために最大成形荷重を抑えること(目的関数),④延性破壊を防ぐため,部品が割れていないこと(特に冷間鍛造.目的関数),⑤一様に変形していること(相当塑性ひずみのばらつきを抑えること.目的関数),と整理した.これらを対象部品の特徴によって組み合わせることで,鍛造の最適設計は多目的最適設計として考えることが妥当であるとの結論を得た.鍛造シミュレーションは計算負荷が高いため,進化的計算や勾配法を用いた最適設計は適切ではなく,機械学習を活用した最適設計法の活用が妥当であることも明らかとなった.これらの知見を基に,工業用部品を対象に,材料歩留まり向上と一様な変形を想定し,欠肉を発生させることなくバリと相当塑性ひずみのばらつきを同時に抑制するようなビレット形状の最適設計をシミュレーショによって実施した.その結果,最適なビレット形状を用いることで,バリは大幅に抑制できることが明らかとなり,さらに部品内部の鍛流線を観察したところ,部品の外形上に沿った鍛流線が得られることが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果を基に,ストローク長を考慮した多段熱間鍛造の最適設計に引き続き取り組む.ストローク長は欠肉やバリの発生,最大成形荷重に大きな影響を与えるため,ビレット形状に加え,ストローク長を設計変数と考えるのは妥当であると考えられる.また,多段鍛造の一つとして,ハンマー鍛造が挙げられる.本研究計画においても,熱間多段鍛造の応用先としてハンマー鍛造を挙げており,この鍛造成形法への拡張を図る.ハンマー鍛造は空気式と油圧式に大きく分けられる.空気式ハンマー鍛造では金型の位置制御が困難であるが,油圧式ハンマー鍛造では成形エネルギを設定することで金型の位置制御を行うことができるため,成形エネルギを設計変数として考えることにする.対象部品によって求められる事項は異なるため,前年度に整理した鍛造における最適設計の重要項目から,適切な目的関数や制約条件を選定し,シミュレーションによって最適なエネルギ配分を決定する.ただし,ここでは,複数の多目的最適設計問題を構築し,実施することになる.最適化の観点からは,パレートフロントを少ない計算回数で効率的に同定する方法を考案し,ハンマー鍛造の最適設計法に組み込み,その妥当性を検証する.
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