GHG削減を背景に、船舶燃料として燃焼時にCO2を排出しないアンモニアが注目されている。燃料としてのアンモニアは、発火点が高く、燃焼速度も低いなど難燃性である。また、アンモニアは、蒸発潜熱が非常に高い。そのため、エンジンにおいて液相状態で噴射されるアンモニアは、噴霧混合気を形成する過程において周囲から多くの熱を吸収し、混合気の温度を低下させる。研究提案者は、この高い蒸発潜熱による混合気の温度低下が、アンモニアの難燃性を助長する要因となっていると考えている。本研究の目的は、超臨界の性質を利用してアンモニアの潜熱による噴霧内温度低下を抑制し、難燃性であるアンモニアの保炎性能を向上することである。研究代表者は、舶用実機スケールのシリンダ内燃焼過程を観察できる大型の可視化装置の開発を進めている。提案する研究は、本試験装置を用いて実験を実施する計画としており、研究初年度となる当該年度では、提案した研究課題を遂行する上で必要となるアンモニアの噴射系ならびに、パイロット燃料噴射系を設計した。具体的には、アンモニアの高圧噴射試験を実施している先行研究を調査し、アンモニアの噴射で必要となる継手類や高圧配管、ポンプ類の選定および、要素部品の設計を行った。また、パイロット燃料噴射弁が装置に搭載できるようにするため、装置搭載用のアダプタを設計、試作した。これにより、アンモニアエンジンで主流となっているデュアルフュエルの燃焼方式が装置で模擬できるようになった。
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