研究課題/領域番号 |
23K04302
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
齊藤 貢 岩手大学, 理工学部, 教授 (20271843)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 大気粉じん / モニタリング / UAV / 画像解析 |
研究実績の概要 |
近年頻発している自然災害からの復旧・復興工事では微細な粉じんが多量に発生し、粉じんに含有する有害成分の吸入による健康影響が問題となっている。本研究では、高額な携帯型分析装置を使用せず、数百メートル四方程度の生活空間における粉じん成分のリアルタイム観測を念頭に置き、汎用のUAVで撮影したモニタリング材表面画像から飛散粉じん中の有害成分を測定する『自律飛行UAVの撮影画像による大気粉じん中有害成分自動モニタリング法の開発』を行っている。 令和5年度は、屋内外の研究ラボにおいてUAV搭載カメラで撮影したMFS(MFS:オリジナルな飛散粉じんパッシブモニタリング材)表面への有害物質の吸着前後の表面画像解析から、成分分析装置を利用することなくMFS表面に付着した重金属含有量の推定が可能かどうかについて着手した。模擬飛散粉じんとして砕石ダスト(輝緑岩)を使用し、対象重金属は呈色試薬により物質の色彩変化がわかっているFeで検討を行った。なお、XRF分析から砕石ダスト中のFe含有量は21.0%であった。 UAV撮影画像からFe含有量推定を行う前段階として、本研究費で購入したUAV搭載カメラの撮影条件の検討を行った。MFS表面画像の撮影距離が2~3mの場合で、等倍撮影画像でもズーム撮影画像でも同程度の画像解析結果を示すことがわかった。また、UAV撮影画像により解析可能な大気飛散粉じんモニタリングの条件は、MFS表面に付着する単位面積当たりの粉じん量が3.0mg/cm2以下で、画像解析に用いる有色ピクセル比が30%以上であることが屋外ラボ実験により確認した。 一方、MFSに付着した砕石ダストに呈色試薬(チオグリコール酸アンモニウム溶液)を噴霧することでFeを含有している粉じん周辺が赤紫色に呈色することを確認し、モニタリングに適切な呈色試薬の噴霧量や濃度など現場実験に向けた準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、Fe以外の他の有害物質については画像解析条件の検討ができていないが、研究はおおむね順調に進展している。 当初予期しなかった点としては、MFS表面に付着した粉じん中有害成分の画像解析において、本研究費で購入したUAV搭載カメラでの撮影は1m程度からの近距離撮影を想定していたが、1m程度の距離からMFS表面を撮影した画像は、オートフォーカスでの撮影にもかかわらずピンぼけしてしまい、近距離で撮影した画像の解析が難しいということであった。そのため、現場での飛散粉じん中の有害成分(先行としてFeを対象とする)モニタリングにおける撮影距離は、令和5年度の研究で画像解析が可能であった2m程度の撮影距離で実施する予定である。撮影距離が遠くなればUAV飛行の際に飛散粉じん現場(砕石場破砕プラント付近を予定)にある障害物との離隔に注意が必要となり、また撮影距離が離れる分だけ画像解像度に影響がでると考えられ、屋外ラボ実験とは異なる現場に適切なUAV飛行操作や撮影条件の再検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として令和6年度は、砕石場破砕プラント付近をモニタリングサイトとした現場実験を行う予定である。当面の対象粉じん中有害成分はFeとする。複数回の現場実験から太陽光や風のある自然環境のもとでのUAV撮影条件や、画像解析が可能となるモニタリング条件(MFS表面付着粉じん量や有色ピクセル比の範囲)などを検討し、UAV撮影画像解析による粉じん中Fe成分含有量の推定が可能かどうか確認する。また、現場実験と並行して、粉じん中に含有するFe以外の他の成分についても、呈色試薬による色彩変化から画像解析が可能かどうかラボ実験にて検討する。さらに、UAV自律飛行・自動撮影に向けたARマーカーの指示を自動認識させるプログラミングコードの作成に着手する計画である。
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