研究課題/領域番号 |
23K05130
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
光武 進 佐賀大学, 農学部, 教授 (10344475)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | FFAR4 / T1R2/T1R3 / GLP-1 / incretin |
研究実績の概要 |
私は、これまでの研究で、酵母や麹菌の細胞膜に含まれるphytosphingosine (PHS)と微生物発酵茶に含まれるteadenol Aが長鎖脂肪酸受容体FFAR4に結合し、インクレチンの一つであるGLP-1の分泌を誘導する事を細胞レベルで明らかにした。また、同様に海苔に含まれるisofloridoside (IF) が甘味受容体T1R2/T1R3に結合し、GLP-1の分泌を誘導する事も細胞レベルで明らかにした。GLP-1は2型糖尿病の創薬ターゲットとなっており、小腸内分泌L細胞上の受容体FFAR4, T1R2/T1R3を介したGLP-1経路の活性化は抗メタボリックシンドロームに働く事が知られている。これらの事から、PHSとteadenol A、IFの個体レベルの作用に興味が持たれる。本研究では、これらGLP-1の分泌を誘導する分子の個体レベルでの作用を解析する事を目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、特にIFに着目し実験を行った。C57BL6マウスに高脂肪食を10週投与し、肥満モデルマウスを作製し、これらマウスにIFの強制投与を行い、その後の摂餌量を測定した。その結果、対照群のマウスと比較して、IFを投与したマウスでは投与後12時間の摂餌量が有意に40%程度減少した。GLP-1は個体レベルでは食欲抑制を引き起こす事が知られている。2型糖尿病の改善薬として上市されているGLP-1受容体作動薬であるリベルサスは、肥満モデルマウスへの投与で約40%、摂餌量を抑制する事が報告されている。今回得られた結果はIFがGLP-1作動薬と同等の作用性を持つ可能性を示している。このことから研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで行った肥満モデルマウスを用いて、PHSとteadenol Aの摂餌に与える影響を検証したい。さらに、これまで観察された摂餌抑制がGLP-1に作用によるものなのかを血中のGLP-1濃度を測定する事で検証しようと考えている。さらにFFAR4やT1R2/T1R3受容体の作用と個体レベルでの表現系の関わりを詳細に検証する為に、FFAR4やT1R2/T1R3遺伝子欠損マウスを用いることも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定した以上に、実験がスムーズに進行し、消耗品等が節約できた。次年度は、GLP-1測定の為の高価なELISA試薬等もある為、本年度の残額を有効に利用できると考えられる。
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