研究課題/領域番号 |
23K05509
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
上野 大介 佐賀大学, 農学部, 准教授 (60423604)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 和牛 / 発情鑑定 / 分析化学 / 匂いセンサー |
研究実績の概要 |
初年度は試料採取法の検討,および嗅覚官能評価と化学分析の基礎的検討を目標としていた.計画通り,佐賀県畜産試験場と協力し,複数回の試料採取を実施した.試料採取の結果,紙タオル拭き取り法では採取できる頸管粘液の量が少なく,また匂いが弱いことが明らかとなった.そこでメトリチェックを利用した手法を検討したところ,採取できる頸管粘液の量が比較的多く,また匂いも比較的強いことが明らかとなった.したがって,本研究ではメトリチェックを利用した手法を採用することとなった. 採取した頸管粘液試料を,嗅覚官能評価に供試した.嗅覚官能評価の結果,発情個体と非発情個体から採取された試料の間で匂いに違いが感知され,発情個体は弱い「なまぐさ様」の,非発情個体は比較的強い「獣様」の匂いを示した.本研究における,発情および非発情の間では,頸管粘液の匂いに差がみられる,という仮説が立証された. そこで,発情および非発情個体の間で差がある匂い物質を検出するため,頸管粘液試料のヘッドスペース部を採取し,ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)分析に供試した.しかし,両試料の間に明確な差はみられなかった.匂いに違いはあっても,明確なクロマトグラムの差は検出されなかったことは,ヒト嗅覚では極微量の匂い物質を感知しているため,GC-MSでは感度が不足していたことが推察された. 次年度では,ヒト嗅覚を利用した分析機器であるにおい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)を活用することで,非発情個体に特徴的な「獣様」の匂い物質の検出が課題となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は試料採取法の検討,および嗅覚官能評価と化学分析の基礎的検討を目標としていた.計画通り,佐賀県畜産試験場と協力し,4回の試料採取に取り組んだことで,メトリチェックを利用した効果的な試料採取法が確立された.また採取した試料を,嗅覚官能評価および化学分析に供試した.初年度の計画はほぼ遂行されており,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
黒毛和種繁殖雌牛から頸管粘液を採取し,嗅覚官能評価に供試した結果,発情個体と非発情個体から採取された試料の間で匂いに違いが感知され,発情個体は弱い「なまぐさ様」の,非発情個体は比較的強い「獣様」の匂いを示した.一方,それら試料をガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)分析に供試したところ両試料の間に明確な差はみられず,匂いに違いはあっても,明確なクロマトグラムの差は検出されなかった.今後,これら試料をにおい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)分析に供試することで,非発情個体に特徴的であった「獣様」の匂い活性を検索することを計画している.
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