研究実績の概要 |
長期間の穀物給与を特徴とする黒毛和種の肥育では、内臓諸器官に大きな負担を強いており、出荷される肥育牛のと畜検査では種々の疾病が観察される。疾病の多発は、牛肉の生産性を低下させるだけでなく、ウシの福祉にとっても好ましいことではない。症状が深刻な場合には突然死となって表面化し、農家に大きな損失となることもある。この対策には給与飼料や飼養環境の改善をはじめとする環境面でのアプローチも考えられるが、遺伝的な側面からのアプローチも検討に値する。 そこで本研究は、と畜時の疾病検査で記録される情報を活用し、代表的な疾病がどの程度遺伝的な支配を受けているのかを統計遺伝学的手法により明らかにし、遺伝的な側面から発症を低下させることが可能なのか否かを明らかにすることを目的として立案したものである。 本年度はデータの収集と整理を中心に行った。ある県のと畜場にて実施されたと畜検査時のデータを入手することができた。データはスプレッドシート形式で電子的に保管されており、手入力の必要はなかった。ただし、複数の疾病を有する個体が複数行に渡り入力されていたり、病名の記載方法が統一されていないといった点があり、編集作業にやや時間を要した。このデータには2016年度から2022年度のデータが含まれていて、黒毛和種に限定すると66,576頭の検査データであった。疾病のうち最も発症頻度の高かったのは脂肪壊死で、鋸屑肝、膀胱結石、膀胱炎、肺炎、肝膿瘍も散見されていた。また別の県においてもデータ入手の可能性について打診を行った。
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