研究課題
細胞内輸送機構であるメンブレントラフィックの機能破綻は神経難病の発症要因であることから、その中心的制御因子であるRabの神経機能制御機構が注目されている。Rabの中でも多機能因子であるRab35は、主に培養細胞を用いた研究から、神経突起伸長や神経伝達物質の放出といった複数の神経機能調節に関与すると考えられている。また、詳細な分子機構は不明であるものの、神経変性疾患との関連も示唆されつつある。しかし、哺乳動物の脳機能におけるRab35の生理的意義はほとんど明らかになっていない。申請者は、欠損領域の異なる2種類の脳特異的Rab35欠損マウスの作製・解析を行い、表現型の差異からRab35が情動行動の制御に関与している可能性を見出した。本研究では、行動解析と分子細胞生物学的解析によって、細胞・組織構造の解析から行動という脳機能のアウトプットまでの統合的解析を行う。これにより、情動制御におけるRab35の生理的機能とその分子メカニズム解明を目指す。本年度は、2系統のノックアウトマウスの組織形態解析から、構造に差異のある脳領域を同定した。
2: おおむね順調に進展している
脳特異的Rab35欠損マウスと前脳特異的Rab35欠損マウスの2系統の大脳構造について組織染色を行い、各脳領域を比較したところ、脳特異的Rab35欠損マウスにおいて、情動行動に関連した領域で構造異常を示す部位を見出した。また、発生を遡って解析することで、形態異常を呈する時期を同定した。
Rab35欠損によって異常を呈する脳領域に対象を絞って解析を進める。形態異常が形成されるメカニズムについて解析を進めるために、異常を呈する前後の時期における細胞の変化について詳細な解析を行う。また、異常領域において情動行動の制御に重要な神経伝達物質の量的変化が起きていないか解析を行う。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Communications Biology
巻: 6 ページ: -
10.1038/s42003-023-04826-x