研究課題/領域番号 |
23K05932
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
増本 翔太 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40738861)
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研究分担者 |
内田 雅己 国立極地研究所, 先端研究推進系, 准教授 (70370096)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 地球温暖化 / 植物病原菌 / ツンドラ生態系 |
研究実績の概要 |
温暖化の進行で積雪増加が予想される北極域では、生物の個体数や多様性への影響が懸念される。一方で生物間の相互作用は生態系を駆動する重要な機構であるにもかかわらず、積雪環境にどのように応答するかの知見は乏しい。本研究では、ノルウェー北極域に位置するニーオルスンにスノーフェンスを設置して積雪量を操作したうえで、植物病原菌の発生について調査する。積雪が病気の発生率に与える影響を検証したのち、この結果を既存の炭素循環モデルに統合することで、積雪環境にともなった感染率の変動が生態系の炭素収支にどの程度影響するかを定量的に明らかにする。これにより、温暖化にともなう積雪変動と病気の発生率および植生の一次生産の関係について明らかにすることを目的としている。 1年目の2023年度は調査地であるスピッツベルゲン島にて夏の調査を行った。当初計画ではスノーフェンスを自ら設置する予定であったが、調査地にはチェコの研究者らが管理するスノーフェンスが既に設置されていた。この研究者らから利用許可が得られたため、共同研究の形でこのスノーフェンスを借りて調査を進めることになった。スノーフェンスから風下方向に2つのライントランセクトを設けて、トランセクト上4mごとに調査区(50㎝方形区)を2つ並べて設置した。調査区に設置したロガーで温度・照度がデータを取得中で、2024年夏のデータ回収によって1年間の上記環境データを得られる見込みである。これにより、スノーフェンスからの距離に依存した調査区ごとの雪解けのタイミングの違いが観察されると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、スノーフェンスを自ら設置する必要があったが、既存のものを使えることになったため大幅に労力を節約できた。一方で、雪解けの違いが感染率に与える影響を観察するためには、少なくとも1年の待機時間が必要である。そのため、研究結果は2年目以降にしか確認できないことに変わりはなく、来年度以降のスムーズな調査が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、昨年度設置した温度・照度データの回収および調査区での病気の感染率やそのほかの土壌環境要因などの計測を現地にて行う予定である。調査によって、雪解けのタイミングが病気の発生率にどのような影響を及ぼすのかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
野外に設置する予定であったスノーフェンスの材料を購入する必要がなくなったため、物品費の利用額が抑えられた。物品費は、今年度以降に実施する病原菌の感染動態や土壌微環境の分析に引き続き利用する。
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