研究課題
脳内の免疫細胞として知られるミクログリアは、シナプス活動監視及び調節 、シナプス新生/除去など、種々の脳の中核機能と深く関与する重要な細胞である。従って、ミクログリアの機能異常は様々の神経変性疾患に深く関与する。サンドホッフ病(SD)は、GM2 ガングリオシドーシスのβ-サブユニットをコードする HEXB の遺伝子異常により、セキソサミニダーゼ (Hex) A及び Hex B の酵素活性が同時に失われる疾患である。これにより、ライソゾームに GM2 ガングリオシド(GM2)が蓄積し、認知及び運動機能が進行性に悪化し、それに伴い知的障害、麻痺、けいれん発作等の神経症状が出現する難治性神経変性疾患である。中枢神経系ではHEXBはミクログリアに強く発現している。従って本疾患は「一次性ミクログリア病」と言え、ミクログリアの機能異常がSD分子病態で決定的な役割を果たしていると考えられる。よってSDミクログリアを正常ミクログリアに置換する細胞治療法が本疾患の有効な治療戦略となる可能性が高い。本研究では、SDミクログリアを正常ミクログリアに置換することで、疾患の治療戦略に直結するデータを取得し、またそのメカニズムの解明を目指すものである。昨年度はCSF1R拮抗薬(PLX5622; PLX)で全脳ミクログリア除去後、任意の脳部位およびタイミングでミクログリアを移植する技術を開発し、移植ミクログリアの生着率、置換効率、安定性の検証を評価した。移植したミクログリアは多数の突起を有した静止型ミクログリアが観察され、脳部位特異的な形態を有し、ホスト脳内に適応していた。今後はこれまでに最適化した時期・条件をもとにSDマウスのMGを外来性野生型MGに置換を検討する。
2: おおむね順調に進展している
昨年度はCSF1R拮抗薬(PLX5622; PLX)で全脳ミクログリア除去後、任意の脳部位およびタイミングでミクログリアを移植する技術を開発し、移植ミクログリアの生着率、置換効率、安定性の検証を評価した。移植したミクログリアは多数の突起を有した静止型ミクログリアが観察され、脳部位特異的な形態を有し、ホスト脳内に適応していた。今後はこれまでに最適化した時期・条件をもとにSDマウスのMGを外来性野生型MGに置換を検討する。
本年度は以下の実験を行う。1.これまでに最適化した時期・条件にて、SDマウスのMGを外来性野生型MGに置換し、外来性MGの生存率、分布、機能等の性質、さらに神経細胞の形態学的変化を解析する。2.SDマウスにおけるMG置換効果に関するデータを蓄積し、MG置換の治療効果を検証する。
作年度は予定していた抗体、試薬等の納品が遅れた。今年度は、抗体及び試薬等の購入に充て、実験を行い、SDマウスにおけるMG置換効果に関するデータを蓄積する。
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Brain
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10.1093/brain/awad358
Int. J. Mol. Sci
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