研究課題
我々の呼気中に含まれる揮発性有機化合物 (VOCs)は、健康状態を示す新たな指標・次世代の疾患バイオマーカーとしても注目されている。脂質過酸化反応 (LPO)は生体内VOCsの主要な生成機序である。脂質の酸化的開裂反応により、多種多様な揮発性酸化脂質がVOCsとして放出される。加えて、LPO進行は、細胞死 (フェロトーシス)を介し様々な疾患発症に関与することから、呼気中揮発性酸化脂質の分析技術は、LPO関連疾患のリスクを「呼気」から予測する未来型医療の提案に繋がる。しかし、これまでに同定された揮発性酸化脂質の数は少なく、生体内にてどの脂質からどのようなVOCsが生じるか、全貌は不明である。そこで本研究では、揮発性酸化脂質の包括的分析技術を開発し、呼気中揮発酸化脂質の疾患バイオマーカーとしての有用性を検証する。
2: おおむね順調に進展している
本年度では、[目標-1] LPO誘導時に生成する揮発性酸化脂質の同定・データベース化を進めた。in vitro実験にてLPOを誘導した際に、気層中へ放出される揮発性酸化脂質の構造同定を行う。揮発性酸化脂質はGC/MSにより分析し、申請者が開発した酸化脂質構造解析法を応用し、その網羅的構造同定・データベース化を実施した。その結果、4種のPUFAのLPOにより産生する48種のVOLs構造ライブラリを構築した。さらに、VOLsプロファイルは、基質となるPUFAとLPO inducerの種類に依存し、特に金属イオンにより構造が著しく多様化することを示した。さらに、作成した構造ライブラリを活用し、フェロトーシスを誘導させた培養細胞から、放出される数種のVOLsを同定することに成功した。これらVOLs分子は、フェロトーシスガスマーカーとして、今後の検証に活用する。
次年度は、フェロトーシス関連疾患モデルを用い、前年度に同定されたVOLsが病態進行に伴い、生体組織・ガス中で増減するかを検証する。加えて、臨床研究を併行して実施し、フェロトーシス関連疾患患者呼気中のVOLs分析を行い、その疾患バイオマーカーとしての有用性を検証する。得られたデータを別途取得した臨床検査値と照らし合わせ、NASH診断における有用性を検証する。
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