研究実績の概要 |
求心性迷走神経における様々なGPCRの役割を網羅的に洗い出すため、GPCRが共役する4つのGタンパク質(Gq, Gi, Gs, G12)シグナルを迷走神経で惹起する実験系を構築した。具体的には、4種類のDREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)を、求心性迷走神経を構成するNodose神経またはJugular神経に対し、それらの細胞特異的なCreドライバーマウス(Phox2b-creまたはWnt-1-cre)を用いて発現させた。次いで、これらのマウスにリガンドであるCNOを投与することで任意のGタンパク質シグナルを惹起させ、それによる神経活動や臓器機能の変化を解析した。特に今年度は、急性反応を中心に解析を進め、例えば血圧や呼吸リズムの変化に対してそれぞれの求心性迷走神経Gタンパク質シグナルが異なる作用を示すことを見出した。
さらに前年度までに行ってきたscRNA-seqのデータを用い、Nodose神経およびJugular神経のそれぞれのサブタイプにおけるGPCRの発現パターンを決定した。
また、これまでに申請者が着目してきた迷走神経GPCRの1つであるLPA3に対し、上記のCreドライバーマウスを用いることで、Nodose神経およびJugular神経特異的LPA3ノックアウトマウスを作製した。これを用いて、LPA3作動薬による薬効およびLPA3グローバルノックアウトマウスの様々な表現型について、それぞれがNodose神経とJugular神経のどちらを介したものであるのかについての検証を進めた。その結果、例えば、LPA3作動薬による降圧・徐脈作用はNodose神経をLPA3シグナルが活性化することに起因するということが明らかとなった。
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