研究課題
T3の経気管投与が各種COPDモデル動物の肺病態に与える影響を検証した.近年,特発性肺線維症 (IPF) のモデルマウスへのT3の経気管投与は,ミトコンドリア機能の改善を介して,病態を抑制することが報告された.また,急性肺障害のモデルマウスにおいてもT3が肺保護的に作用することが報告された.本検討では,T3によるCOPD治療の可能性を検証するため,ElastaseマウスおよびC57BL/6-βENaC-Tgマウスに対し,T3を経気管投与し,その肺病態に与える影響について検証した.その結果,Elastaseマウスにおいてのみ気腫化の有意な抑制と呼吸機能の一部改善が認められた.次に,ElastaseマウスにおいてT3が病態抑制を示したメカニズムを探索するべく,ミトコンドリア生合成マーカーであるPpargc1a,酸化ストレス関連因子,成長因子,炎症性サイトカインの発現に着目した.その結果,T3の経気管投与は,Ppargc1aおよび抗酸化因子の一つであるGclmの発現を増加させたことから,T3の肺保護作用には,Ppargc1a-Gclm経路を介したミトコンドリア機能の改善や抗酸化作用が関与していることが示唆された.(Takahashi., et al., T3 Intratracheal Therapy Alleviates Pulmonary Pathology in an Elastase-Induced Emphysema-Dominant COPD Mouse Model. Antioxidants (Basel). 2023 13(1):30. doi: 10.3390/antiox13010030.に成果が掲載)
2: おおむね順調に進展している
T3に関連した成果は十分に達成され、生理活性ペプチドapelin、肥満誘導性 2 型糖尿病併発に関するプロジェクトの成果も順調に得られている。
生理活性ペプチドapelin 腹腔内投与による気腫病変優位型COPD肺病態抑制作用に関する研究を進める。具体的には、多様な作用点を有する包括的なアプローチを企図し、COPD併存疾患サルコペニアおよび心・血管疾患の治療標的として知られるapelinの各種モデルに対する投与がCOPD病態に対する影響 (気腫化、呼吸機能、炎症など) を検討する。また、肥満誘導性 2 型糖尿病併発がCOPD病態に与える影響とその機序の解明を行う。COPD・2 型糖尿病合併症モデルマウスを作製し、合併症が肺の組織レベルで、直接的なインスリン不応答性、すなわち”肺組織インスリン抵抗性”を引き起こし、COPD肺病態を悪化させるメカニズムについて検討する。各種モデルにおける2 型糖尿病の併発がCOPD病態に対する影響 (気腫化、呼吸機能、炎症) および肺組織インスリン抵抗性 (パルミチン酸によるIGF-1シグナル応答性の低下) の機序の解明をRNA-seqを活用した網羅解析などの点から明らかにする。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)
Kidney360
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10.34067/KID.0000000000000134
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Antioxidants (Basel) .
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10.3390/antiox13010030