研究実績の概要 |
本年度は、低体温によって誘導されるSUMO化修飾と血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)の機能制御の関連性について以下の点を明らかにした。 0、本研究は、低体温誘導SUMO化修飾と虚血再灌流時のBBBの機能制御機構の解明を目的とするため、低体温耐性動物(シリアンハムスター)を用いた一過性両側頸動脈閉塞術(tBCCAO術)による虚血再灌流障害モデルを確立し、以下これを用いて解析した。1、脳内SUMO化修飾レベルは体温低下レベルに依存して亢進する(強い負の相関が認められる)ことを明らかにした。2、tBCCAO術による海馬CA1及びCA3領域における遅発性神経細胞死は、体温を30℃に維持し脳内SUMO化修飾レベルを亢進させると認められないが、SUMO化修飾阻害剤(anacardic acid: E1-SUMO化活性化酵素阻害剤, 2-D08: E2-SUMO結合酵素阻害剤)を併用すると低体温の保護作用が減弱することを明らかにした。3、脳梗塞モデルにおけるBBBの透過性は、虚血時および再灌流後に二相性(第一相: 再灌流3-8時間後, 第二相: 再灌流18-96時間後)に亢進する。低体温は、虚血時や再灌流後第一相のBBBの透過性には影響を与えず、再灌流後第二相の透過性亢進のみを有意に抑制した。さらに、BBBに対する低体温の保護(透過性亢進抑制)作用はSUMO化修飾阻害剤で減弱することが明らかとなった。 これらの知見は、低体温によって誘導されるSUMO化修飾が、BBBの保護機能を介した脳保護作用発現に寄与していることを示唆する。
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