研究課題/領域番号 |
23K06285
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
戸田 貴大 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (00254706)
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研究分担者 |
青山 剛 北海道科学大学, 薬学部, 助教 (10909667)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | レミマゾラム / 血漿中濃度 / BIS / SedLine / 非結合形濃度 / 限外ろ過 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、超短時間作用型ベンゾジアゼピン系の静脈麻酔薬であるレミマゾラムにおける、投与後のレミマゾラムおよび代謝物CNS7054の体内動態や、これらの血漿中濃度と薬理効果との関係について検討し、患者ごとに適切な導入期および維持期のレミマゾラム投与速度を設定する方法を提案することにある。2023年度は、レミマゾラム投与中のレミマゾラムおよびCNS7054血漿中濃度データを得るため、札幌医科大学附属病院においてレミマゾラムによる全身麻酔下で手術を受ける患者に留置した観血的動脈路から経時的に採血を行った。同時に各時点での鎮静度指標(BIS、SedLine等)を記録した。また、レミマゾラムおよびCNS7054の体内動態や薬理効果発現に対する影響因子の同定を目的に、年齢、性別、体重、レミマゾラムの投与速度、併用薬、既往歴、臨床検査値などの患者情報についても併せて収集した。症例数は目標の40例に到達した。予備的解析を行い、レミマゾラムの全身クリアランスと体重、BMIとの間に有意な正の相関が認められること、各種パラメータに対して性差は認められないこと、鎮静度指標についてはBIS、SedLineともにレミマゾラムやCNS7054血中濃度との間に明確な関係性は見られないことを確認した。 さらに、術中に人工心肺を使用する症例においては、レミマゾラムのタンパク結合率の変化に伴う総濃度ならびに非結合形濃度の変動が予想される。これを明らかにし、人工心肺使用時におけるレミマゾラム投与速度調整を可能とするためには、レミマゾラムおよびCNS7054の非結合形濃度測定が必要である。そこで、限外ろ過法を用いたレミマゾラムおよびCNS7054の非結合形濃度測定法の開発を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レミマゾラムおよび代謝物CNS7054の体内動態や、これらの血漿中濃度と薬理効果との関係について検討するための各血漿中濃度、鎮静度指標、患者情報に関しては、予定通り札幌医科大学附属病院に入院した患者40症例の情報を収集することができた。 研究を進めるにあたり、術中に人工心肺を使用する症例において、レミマゾラムのタンパク結合率の変化に伴う総濃度ならびに非結合形濃度の変動の可能性が示唆された。そこで、限外ろ過法を用いたレミマゾラムおよびCNS7054の非結合形濃度測定法の開発を開始した。まもなく定量法を確立できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
収集・測定した各種患者情報および血漿中濃度データを用いて、母集団薬物動態解析ソフトNONMEMによる母集団薬物動態解析により、レミマゾラムの母集団PKパラメータおよびその変動要因を推定する。BISモニターやSedLineなどの鎮静度評価を用いて、NONMEMによる母集団薬物動態解析を実施し、レミマゾラムの母集団PDパラメータおよびその変動要因を推定することにより、レミマゾラム血漿中濃度との相関関係が良好な鎮静度指標を明らかにする。先に推定したレミマゾラムの母集団PKパラメータ およびここで得られたレミマゾラムの母集団PDパラメータの結果を基に、導入期および維持期のレミマゾラム投与速度の個別化を提案する。さらに、レミマゾラムおよびCNS7054の非結合形濃度測定法の開発終了後、術中に人工心肺を使用する症例においてレミマゾラムおよびCNS7054の非結合形濃度を測定することで、人工心肺使用中のレミマゾラムのタンパク結合率、総濃度ならびに非結合形濃度の変動について調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
LC-MS/MSを用いたレミマゾラムおよび代謝物CNS7054の同時定量法について論文投稿を行う計画であったが、未達となった。そのため計上していた英文校正料、論文投稿料について消耗品購入に充てたが、残額が生じた。2024年度は早急に論文投稿に取り組み、その費用に充てる。
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