研究課題/領域番号 |
23K06629
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小林 昌彦 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (70285633)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | glioma |
研究実績の概要 |
膠芽腫(グリオブラストーマ)は治療抵抗性の予後不良悪性疾患であり、未だ治癒に至る有効な治療法は開発されていない。グリオブラストーマは遺伝子発現プロファイルにより性質の異なるいくつかのサブタイプに分類されている。しかし、様々なストレスが刺激となり腫瘍内においてサブタイプ間での移行、いわゆる細胞系譜転換と、それに伴う細胞形質変化を生じることが知られている。特に、proneuralサブタイプの腫瘍が、再発時に治療抵抗性のmesenchymalサブタイプの腫瘍に変わるproneural-mesenchymal transitionが問題になっている。この細胞系譜転換とmesenchymalサブタイプの治療抵抗性の機構を明らかにするために、グリオブラストーマのmesenchymalサブタイプと治療抵抗性のマーカーであるCD44に着目し、CD44高発現細胞集団と低発現細胞集団のRNA-seq解析を行ったところ、リソソームが治療抵抗性に関与していることを見出した。さらに、リソソームの阻害剤にて処置を行うことによって、グリオブラストーマの主要治療法である化学療法剤テモゾロミドや電離放射線に対する感受性を上げることができることを明らかにした。転写因子の解析から、グリオブラストーマでは、リソソームを介した治療抵抗性にはTFE3が関与していることを見出した。また、リソソーム活性の異なる複数の患者由来膠芽腫細胞、および、TFE3過剰発現細胞、TFE3欠損細胞のRNA-seq解析を行い、膠芽腫の悪性化、治療抵抗性に関与する遺伝子の探索を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者由来膠芽腫細胞を用いた解析から、膠芽腫の治療抵抗性には、リソソームとその生合成に関与する転写因子TFE3が関与していることを見出し、患者サンプルの解析でも、TFE3のタンパク質量が膠芽腫の悪性度と相関している知見が得られた。現在は、TFE3の活性を制御する上流因子の探索と、悪性化に関与する下流因子の探索を行なっている。以上より本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見をもとに、TFE3の活性を制御する上流因子とその制御機構の解析を行う。また、RNA-seqの結果をもとに、膠芽腫の治療抵抗性と悪性化に関与するTFE3の下流因子の探索とそのメカニズムの解析を行う。これにより、治療抵抗性や悪性化に働く腫瘍環境とそのメカニズムの分子基盤を明らかにする。
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