研究課題/領域番号 |
23K06644
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
竹永 啓三 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ がん先進治療開発研究室, 特任研究員 (80260256)
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研究分担者 |
秋元 美穂 帝京大学, 医学部, 講師 (60437556)
越川 信子 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ がん先進治療開発研究室, 主任上席研究員 (90260249)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | IL-33 / sST2 / マウス膵臓がん細胞株 / 皮下移植 / アディポネクチン / 腫瘍増殖 |
研究実績の概要 |
我々は、IL-33-受容体(ST2L)軸のデコイ受容体であるsST2をノックダウンしたマウス膵臓がんPanc02細胞をマウスの膵臓に同所移植すると、対照細胞の場合と比較して、腫瘍増殖が抑制されること、これには腫瘍微小環境中でのケモカインCXCL3量の減少に伴う腫瘍関連好中球数の減少が関わっていることを以前に報告した。本研究では、異所(皮下)移植系では腫瘍増殖がどう変化するのかを同じ細胞を用いて検討した。その結果、腫瘍増殖が逆に促進される結果を得た。しかし、IL-33ノックアウトマウスではこのような腫瘍増殖の差は認められなかった。この現象の分子基盤を探るために腫瘍内のサイトカイン・ケモカイン発現量をPCRアレイを用いて検討した。その結果、抗炎症作用を示すことで知られるアディポネクチンの量がsST2ノックダウン腫瘍内で顕著に低下していることが明らかになった。腫瘍内アディポネクチンの産生細胞は、抗アディポネクチン抗体と抗GLUT4抗体を用いた二重免疫蛍光染色の結果、腫瘍内浸潤脂肪細胞であり、その組織単位面積あたりの細胞数が低下していることも明らかになった。次に、sST2ノックダウン腫瘍内でのアディポネクチンの減少が腫瘍進展に関わることで知られる腫瘍内炎症の亢進に関与している可能性を考え、炎症に中心的に関わるNF-κBの活性化をIκBαのリン酸化を指標にして調べた。その結果、sST2ノックダウン腫瘍内ではよりNF-κBが活性化されており炎症亢進状態になっていることが示唆された。これらの結果から、特殊な微小環境である膵臓(同所)と皮下(異所)とでは、間質細胞のIL-33レスポンス(Th2レスポンス以外の未知の細胞応答が起きている可能性も含めて)が極めて異なり、それがsST2ノックダウンPanc02細胞の腫瘍増殖に影響している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にヒト膵臓がん細胞株BxPC-3のsST2ノックダウン細胞株を作製予定であったが、レトロウイルスを使用したsST2 shRNAによるノックダウンがうまく行かず、レンチウイルスを用いた系に変更して行なっているため、計画が若干遅れている。しかし、他は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、sST2ノックダウンPanc02細胞で再度sST2が発現されるようにした細胞を作製し、皮下に移植した際に、sST2ノックダウン細胞と比較して腫瘍増殖が抑制されるかどうかを検討する。また、その際の分子基盤が同様であるかを検討する。さらに、異所として、臨床で膵臓がんの転移好発臓器である肝臓への移植を行い、sST2ノックダウンPanc02細胞の腫瘍増殖を対照細胞のそれと比較検討する。肝臓での腫瘍増殖をインビボイメージングシステムを用いてモニターするためにルシフェラーゼ発現細胞をレンチウイルスを用いて作製する。また、腫瘍内でのサイトカイン・ケモカイン発現量や炎症の程度を調べる。さらに、同様な事象がヒト膵臓がん細胞でも観察されるのかどうかを、内在性のsST2発現細胞株であるBxPC-3細胞でsST2をレンチウイルスを用いたshRNAの導入によりノックダウンさせた細胞を作製し検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いた動物実験の回数が予定よりも少なかったために次年度使用額が生じた。 翌年分の助成金に加えてマウスを含めた物品費に使用予定である。
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