研究課題/領域番号 |
23K06728
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
伊庭 善孝 藤田医科大学, 国際再生医療センター, 助教 (90298547)
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研究分担者 |
三原 圭一朗 藤田医科大学, 国際再生医療センター, 教授 (90363077)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | CAR-T / CD24 / CD47 |
研究実績の概要 |
抗ヒトCD24抗体の遺伝子を単離するのに必要となるヒトCD24とヒト抗体Fc領域の融合タンパク質(CD24Fc)を動物細胞で発現するためのプラスミドpcDNA3.4-CD24Fcを作製した。このプラスミドで動物細胞ExpiCHOをトランスフェクションし、培養上清中にCD24Fcを分泌させ、CD24FcをProtein Aカラムで精製した。更に、CD24とGSTの融合タンパク質(GSTCD24)を大腸菌で発現させるためのプラスミドpGEX-CD24を作製し、大腸菌でGSTCD24を発現させ、グルタチオンカラムでGSTCD24を精製した。次に、CD24-FcとGSTCD24でマウスを免役し、血清中の抗体価の上昇を確認後、マウスを安楽死させて脾臓を摘出した。脾臓からmRNAを抽出し、cDNAを作製した後、PCRでH鎖およびL鎖抗体遺伝子を増幅した。H鎖およびL鎖抗体遺伝子のPCR産物をファージ抗体ライブラリー作製用ベクターpSCCA5-E8dに組み込んでファージ抗体ライブラリーを作製した。このファージライブラリーを合成CD24ペプチドに反応させ、結合したファージを酸で溶出して抗CD24ファージ抗体を回収した。この操作を4回繰り返した。最後にCD24発現細胞であるNALM6に反応させ、NALM6に結合するファージ抗体を濃縮後、シングルコロニーを単離してCD24ペプチドに対してELISAポジティブなクローンを得た。ELISAポジティブクローンのうち、CD24発現細胞であるNALM6細胞およびREH細胞、CD24強制発現293T細胞のすべてに反応する抗体をフローサイトメトリーで選択し、抗CD24抗体を得た。得られたクローンはわずかに塩基配列の違いは見られたが、基本的には一種類であった。この抗体遺伝子をCARレトロウイルスベクターに組み込み、解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗CD24抗体の単離が難航したため、進捗が当初の計画よりやや遅れている。CD24は約30アミノ酸の非常に小さいタンパク質のため、通常に比べて抗体の単離が難しかったと推測される。最初、マウス抗体ライブラリーから抗CD24抗体を単離するのに難航したため、これと並行してCD24ペプチドでウサギを免役し、マウスの場合と同様にしてウサギ抗体ライブラリーを作製して抗体を単離することを試みた。その結果、CD24ペプチドに対してELISAポジティブなクローンを複数単離できた。しかし、それらのウサギ抗CD24抗体は、CD24強制発現293T細胞には中程度に反応したものの、NALM6およびREH細胞に弱く反応し、期待した性能を持つ抗体は得られず、ウサギ抗CD24抗体の単離は失敗に終わった。その後、スクリーニング法を試行錯誤した結果、最終的に23年度末頃にCD24ペプチドおよびNALM6細胞を組み合わせたスクリーニング法により、マウス抗体ライブラリーから期待した性能を持つ抗CD24抗体を単離することに成功した。23年度中にマウス抗CD24抗体遺伝子をCARレトロウイルスベクターに組み込むことはできたが、抗CD24-CAR-T細胞の活性評価は次年度に持ち越しとなった。CAR-T細胞の活性評価まで到達できなかった点をやや計画が遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は23年度から繰り越した抗CD24-CAR-T細胞の活性評価を行う。更に研究課題となっているdual-CAR-T細胞を作製し、活性評価を行う。抗CD47抗体は既に単離済みなので、23年度に単離した抗CD24と組み合わせたdual-CARのコンストラクトを作製する。dual-CARには主に2種類の抗体遺伝子を連結して一つの分子として発現させる方法と、それぞれのCARのコンストラクトを同時に一つの細胞で発現させる方法の二通りが考えられる。後者の場合、2種類のCARの内部シグナル分子を同じにする場合と、異なる分子にする場合が有り、それにより活性が異なる可能性があり、検討の余地がある。また、T細胞はCD47を発現しているため、T細胞のCD47発現を抑える工夫が必要になるかもしれないと考えている。24年度は単離した抗体遺伝子を用いていくつかのCARのコンストラクトを作製し、活性に及ぼす効果の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度にマウスを用いたin vivoでのCAR-Tの評価を行う予定であったが、抗体の単離に予想以上の時間がかかったため、計画に遅れが生じin vivoの実験を実施できなった。そのため、in vivoの実験に使用する予定であった予算を使用できず、次年度に繰り越すことになった。2024年度は、2023年度に実施できなかったin vivoの実験を実施し、繰り越した予算を使用する予定である。
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